エロティカ・セブン -2-

  

 格納庫に連れ込んで、裸に向いて、サンジの身体中を舐めたり吸ったり噛み付いていたりしていたら、「あのよ」と強引に引き出される性欲に途切れる息に混じって、戸惑ったような声がした。
 ゾロはサンジの臍の穴に舌を突っ込みながら、それでも目で「何だ?」とサンジに聞いてやる。サンジの身体はとっくに快感で染まった空気を晒し出し、ゾロの散らした紅い花びらが無数に散っている。いまさら怖気ついたとは言わせる気はない。
「期待に添えなくても、がっかりすんじゃねェぞ」
「何、言ってやがる。てめェ、島に着いたときゃ遊び回っていやがったじゃねェか。ざけんな」
 ついでに遊ぶ相手がいつも男だったことも知っている。
 臍をぐりぐり舐められて縁に犬歯を立てられて、サンジは思わず身体を仰け反らせながら、「だから、・・・察しろよ、そんくれェ」と震える声で言った。ゾロが何かを勘違いしているらしいのは遅ればせながら、理解した。
 遊んでいた、と言ってもサンジはコッチは初めてなのだ。
 いつだったか、行為の最中でエースが言った。
『サンジは真面目だな』
『ああ?』
『理屈で図れないから恋愛は成り立つってことだ。一線越えちゃえば、何だって思うかも知れないだろ』
『説教なんかいらねェよ』
 自分で選んだことに後悔はしない。
 例え、自分が望んだものが手に入らないのだとしても。
 そんなふうにサンジは思っていたのだが。
『愛してんなら、こだわりとかプライドとかどうでもいいんじゃないのか?気持ち良くなっちゃえ』
 その時はエースの邪魔な戯言をやめさせたくて、エースの奥をぐりぐりと突いて喘がせて言葉をさえぎった。そんなサンジにエースは快楽に染まって、声を上げて応えてくれた。   
身体で、その行為の良さをサンジに植えつけた。
 そしてサンジの耳元でエースは言った。
『な?恋し合っているだけで、こんなに気持ちいいんだぜ?愛し合ったら、きっとすごいだろうね?』
 こんな局面で他の男を思い出している自分はどうかと思うが、だからこそ、こうしていられるのだと思う。
 何がなんだか判らないが、ゾロが自分を抱きたいと思っているらしいのは、理解した。自分から望むことなんて出来ないが、こんなふうに全身で望まれてしまったら、見ないふりなんて出来ないし、どんなに抗おうとしても、ゾロは容赦なく、サンジの情欲を暴いてゆき、体中を得体の知れない昂ぶりが駆け巡り、もう流されてもいいんじゃないかと思う程。
 けれど、あの時のエースのように、自分がゾロを抱きとめてやれるのか判らない。
「固ェな」
 サンジの秘奥の縁をいじりながら、ゾロが訝しげに言った。サンジは羞恥に耐えるようにして、目を閉じて、唇を噛み締めている。
「力抜け」
 抜け、と言ってもそんなところの力をどう抜いたらいいのか、サンジの方が聞きたいくらいなのだ。
 歯の奥をカタカタ言わせながら、横を向いてからだを投げ出しているサンジにゾロは、はっ、と気がつく。
「まさかてめ、コッチは初めてなのか」
 突然、サンジがくわっと歯を剥いて喚いた。
「だから、あんま、期待すんなっつってんじゃねェか!!」
 そうか、何となく自分の欲がサンジを抱きたい、と言う方にあったもんだから、サンジが男もイケると知った時、てっきり男を受け入れる側なんだと思い込んでしまったが、よくよくサンジと言う男を思い出せば、抱く側だったと考える方が確かに自然だ。そう理解すれば、サンジの言葉の意味も理解できる。「あんあん言わされるのは趣味じゃない」とか、「察しろ」とか。そう言うことだったのか。
 ゾロはにたり、と哂った。
「覚悟しとけ」
 サンジの耳元に囁きながら、指を突き入れた。サンジの身体がビクリと跳ね上がるのを押さえつけて、「きっちり仕込んでやっからよ」。
 もう、他の誰にも渡す気はない。
 サンジの顎の髭から唇を獣のようにベロリと舐める。
「エロくせェ顔に磨きをかけやがって」
 ゾロの目が爛々と輝いていた。
 そして、サンジの長い夜がはじまった。



 もうサンジはドロドロだった。
 ゾロの指で、唇で、身体で、その心臓の音で高められて、浚われるようにして高められて、射精させられて、真っ当な思考など一つも浮かんでこない。
 ゾロは最初、殊更、見せつけるようにサンジを愛撫した。サンジが羞恥に身を硬くしつつも、感じで乱れていく様を楽しんでいるかのようだった。乳首を舐めて噛んで、性感帯の一つにするまで、どれくらい時間をかけただろう。
 何度も追い上げて、射精させて、快楽の淵に漂っている体を強引に引き戻して、さらなる快楽を植えつける。
 最初はただ慄いていただけの身体が、ゾロの手管に落ちる。
 ゾロの唇に咥えられて、奥を弄られながら、放った。袋を揉みしだかれて、身体の奥をまさぐられて。異物感しか感じなかったサンジの奥はいつしか、ゾロの指の動きに翻弄されて。自分の知らない感覚を覚えこまされる恐怖に「やめろ」とか「嫌だ」とか何度もゾロに懇願したのに、許されなくて。
 今はもう、ただ喘いで、その快楽を享受しているだけの器でしかない。  
 広げた自分の足の間でうごめくゾロの頭が視角的も卑猥で。
 何がなんだか、もう判らないのに、さらにゾロはサンジを追い上げ、そして果てさせ、そしてまた追い上げる。
 許してくれ、と呟いても無視され、ゾロの行為は止まらない。それどころか、サンジが許しを請うたびにその行為はひどくなり、サンジを追い詰め、追い上げ、底のない快楽を教えるのだ。
 指を三本咥え込まされて、追い上げられる。
 無遠慮に奥を突かれて、サンジの喉仏があらわになる。
「また、イッたな」
 もう、サンジの性器からは何もこぼれないのに、それはふるりと振るえてゾロの手の中で、口の中で育つのだ。サンジの後孔は信じられない程に広げられ、熟れた粘膜が紅く収縮を繰り返す。
 ついにゾロの陰茎がソコに宛がわれ、サンジは無意識に「無理・・・無理」と髪を振り乱して逃げを打った。
「無理・・・そんな・・無理・・・」
 ゾロの砲身が自分の中に入り込んでくるのを拒みたいのに、身体が悦んで迎え入れていく。苦痛にも似た快楽がサンジを苛んだ。身体の中に熱を感じると言うのは何て蠱惑に満ちててるのか。
 行き場のない悦楽がサンジを翻弄する。
 容赦なく、ゾロがサンジを穿つ。
「ひっ・・・ひっ」
 と、サンジが全身を硬直させ、身体を仰け反らせながら喘いだ。
また、サンジの性器がぶるりと震え、達したことを知らせるのに、ゾロの律動は止まない。一回で許す気もない。
ゾロはサンジの足を大きく開いて、わざと動きを止めた。
「コック、見てみろ。いい眺めだろうが」
 サンジに低く囁く。
 ぼんやりと瞼を開けるサンジにゾロは男根を埋め込んだサンジの場所を見せ付けるようにサンジの腰を掲げた。ゾロの陰茎がサンジの孔を陵辱している。ゾロの太い浅黒い陰茎がサンジの中を陵辱するたびにサンジの孔がヒクつき、粘膜が淫猥に蠢く。だが、サンジはもうその卑猥さを認識することも出来ない。
 ゾロが突いてくるその衝撃にただ、全身を震わせて、そして、また、全身を硬直させて、前からはもう何も射さないまま、果てる。
 サンジの身体に、ゾロから溢れた汗が滴り落ちた。



 あれだけ抱いて、身も心もやっと自分のモンになったと思ったのに、それでもやっぱりサンジは時折、海を見て誰かを思う。 
 何度も抱いて、何度も快楽で縛り付けても、サンジは悠々とそこから抜け出して、誰かを想う。
 早く、その誰かを消してしまいたいのに、そう出来ないのが歯がゆいが、サンジが自分の思い通りになるような男だったら最初から惹かれたりしなかっただろうとも思うから、ゾロには痛し痒しだ。
「あのよ」
 そんなゾロの隣でサンジがボソボソと喋り始めた。
「エースって知ってんだろ。ルフィの兄貴」
「おう」
「何度か抱いたことあんだ」
「・・・」
 衝撃的な告白に、思わず嫉妬で眩暈がしたゾロだったが、「無駄に妬くな、アホ」と、サンジに一蹴された。「抱いた、つうより身体で慰められたんだな、オレ」
「ああ?」
「テメェが好きだった。けど、テメェは抱けねェと思った。そんな対象にしちゃいけねェんだと自分を戒めた」
「・・・」
「そしたらエースが慰めてくれてよ」
 そんだけの話なんだ、とサンジは言った。
「もしエースがこの海のどこかで生きているんだとしたら、オレはこんな風にエースを思い出したりはしねェよ」
 気付けば、あの優しさを思い出す。鈍い痛みとともに。
 それはきっとずっと、消えることはない。
 ゾロがサンジの頭を片手で寄せて、自分の肩に置く。
「そうか」
 それなら、それでいい。
 その痛みごと、サンジなのだろう。
 その痛みごと、愛してやろう。
「おい、テメェ」
 サンジがからかうように上目遣いでゾロを見ていた。「オレを傷モノにしたんだから、責任とって、きっちり愛せよ?でねェと、オレがテメェをあんあん言わすぞ」
「馬鹿言ってんじゃねェ。そんな余裕やるか」
 憎まれ口を返して、そしてゾロは微苦笑し、そして二人はどちらからともなく互いを抱き締め合った。


Fin
 

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Waruい男のNatsu様よりSSいただきましたvv

「根っからのゾロサンなので逆CPは無理!
 でも攻サンジ書いてみた〜!」

と言うのでどんなお話なのかと思ったら・・・!!

なるほど〜!!
お相手次第で受攻自在(何だそりゃ)なんですね!!

芳賀の妄想の中では、ゾロとサンジはほぼ力は拮抗していて、
本当に本当の最後の部分で受攻が決まっちゃうというか、

基本的に攻なのに相手の勢いに押されてうっかり受けちゃうような
そんな二人がそれぞれ大好物なんですよ!

もう!!なっちゃん、大好きだ!!


サンエー(と表記するんだろーか・・・)は初めて読みました。
短くも鮮烈な人生を生きたエース。

その生涯に真実愛された記憶があったことを
心から願ってやみません。

Natsu様、素敵な投稿作品をありがとうございました!!

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