サンジは伏し目がちで、常に無い、真摯な口調だった。
ゾロもサンジの方へときちんと向き直る。
「約束を違えたのはおれだ。
それにあんなチンケなモン渡しちまって済まなかった。」
頭を下げるゾロに、サンジはバツが悪そうに言った。
「・・・違うだろ、ゾロ、
あれ、あの時店先で見てたやつだろ。
覚えててくれたんだな。
なのにおれ・・・」
「いや、あれじゃただのごみだ。」
サンジは弾かれたように顔を上げる。
「そんなことねえよ!
・・・それにさ、おれ、嬉しかったんだよ」
「・・・は?」
「確かにあのときの香草だって気づかなかったけどさ
ただのごみにしか見えなかったけどさ、ホント嬉しかったんだよ」
「・・・嘘つけ」
「嘘じゃねえ!、ごみにしか見えなかったし、なんだかわかんなかったけど
おれのために泥だらけになってまで探してくれたんだろ?
おれ、おまえには嫌われてると思ってたからさ」
「おれを嫌ってんのはおまえのほうだろが」
苦々しげなゾロの言葉にサンジは再び目を伏せ、
自嘲気味の曖昧な笑みを浮かべながら言った。
「はは・・おれあ、天邪鬼だからなぁ・・・
信じられなくてもしょうがねえよ。
初めて会った日。
おまえが鷹の目に向かっていって、ぶった切られるのを見て
全部持ってかれちまった。」
「・・・?」
「ゾロ、おれはおまえに惚れてんだ。」
ゾロはガバッと立ち上がり、おもむろにサンジを抱きしめた。
「な・・・?!」
力任せにぎゅうぎゅうと締めつけられ、サンジは面食らう。
「おい、ちょ、なんだよ、離せよ!!」
ゾロは腕に更に力を込めながら叫んだ。
「おれも、てめえに惚れてんだ、クソコック!」
「はぁああ!?」
「本気だ、好きだ、コック!」
「・・・ッなわけあるかぁ!!」
サンジは散々に暴れ、ゾロを突き飛ばした。
結構な勢いでゾロが宙を跳ぶ。
「悪かったよ、だからからかうのは止めてくれ。
わかっただろ、おれがその・・・お前のことどう思ってるかとか。
気になってしょうがなくて、それでお前にちょっかい出したり
喧嘩吹っ掛けたりしてたんだよ。
ああ、悪かったって、ホント反省してんだよ。
そこらのガキと一緒だよ、好きな女の子泣かしちまうガキとさ。
ま、相手がお前だから泣かねぇけど。」
うなだれる首筋の白さがゾロの目を射る。
聞き違いじゃねえよな?こいつが、おれのことを・・・?
「悪ィ、おれはもう我慢できねえッ」
ゾロは再びサンジに近づくと、肩を掴んで引き寄せた。
驚いて顔を上げたその表情がまたとんでもない間抜けっぷりだったが、
その薄く開いた唇に性急に口付けた。
抗議の声を上げようとするのに構わず、深く、深く口付ける。
もがく身体を押さえ込むうちにきつく抱きしめる形になり、自然、下半身も密着する。
「!」
ゾロの変化に気づいたらしいサンジが、大きく抵抗を始めた。
放すまいとするゾロと不毛な力比べをした後、サンジはわずかに唇を話すことに成功し、
「・・・てめ、何っ!」
と声を上げたが、すぐにゾロが再び唇を重ねる。
擦り付けるうちにもゾロ自身は張り詰めてゆく。
ひとしきり抵抗した後、サンジは観念したのか、ゾロに身を委ねてきた。
抵抗が止んだのを見計らって、ゾロはきつく抱き締めていた腕を緩めた。
サンジはしばらくなすがままになっていたが、
やがて静かにゾロを押しやり少し身体を離すと、
衣服の上からゾロの昂ぶりに確かめるように触れた。
「なぁ…、マジで、
これ、おれでこんなになっちゃってんの?」
「ああ。
からかってるワケじゃねぇってわかったか。
冗談でこうはならねぇ。
女好きのてめぇには悪いが、」
「抱きたい。」
真っすぐな瞳で見つめられ、サンジはくしゃりと顔を歪めた。
「おれの身体なんてつまんねぇと思うけど。
やわらかいおっぱいも無いし、おまえと同じモン付いてるし。」
「良い身体してるから抱きたいワケじゃねぇ。
おまえだから、欲しいんだ。」
「うわぁ、マジで?」
サンジは髪をかきむしった。
「それにさ、これって、おれが入れられる側ってこと?
マジで?」
「悪いな、おまえの誕生日なのに、おまえが欲しい。」
どこまでも真っ直ぐなゾロの言葉にサンジは押し黙る。
やがて意を決したように言った。
「良いよ、もう。
その代わり、ちゃんとよこせよ。」
「何をだ、あの草か?」
何言ってんだ、お前───。
サンジはふう、と溜息をつく。
「アホ。
愛だよ、愛。」