コンパートメントV 2
















片手でゾロを押さえつけた状態のままで、サンジは器用にバックルをはずした。
制服のズボンと下着がずり落とされ、尻が外気にさらされる。

戸外で練習をしている野球部の連中の掛け声と、
バットがボールを捉える金属音が聞こえた。

サンジはゾロの尻たぶを割り開き、奥にある蕾に似た窄まりを撫でた。
無理やり指を突っ込もうとして失敗し、盛大に舌打ちすると、
唾液でたっぷりと指を湿らせてから再度指を突き立てた。

「やめ、う────、あッ、あああッ!!」
鋭い痛みを伴いながら、サンジの指がゾロの中へと入り込んでくる。
唾液程度では足りるはずも無い。
それでもサンジは強引に指で入り口を押し広げてゆく。

「なぁ、チンポ突っ込んだら分かる?お前、おれを信じてくれる?」

指が引き抜かれ、ヌルついた熱の塊が押し付けられた。
それがサンジのペニスだと気づくのに少し時間が掛かった。

ちゃんと興奮してるんだ。
男のおれの身体に欲情してくれている。

嬉しかった。
そして。

こんな刹那的な状況の中で犯されようとしているのに、喜んでいる自分に反吐が出そうだった。

無理に押し広げられた所為で、入り口はヒリヒリと痛む。
ろくに解れてもいないそこに、サンジは無理やり押し入ってきた。

「あッ、あッ、いあああああッ!!」

一気にカリ首の辺りまで押し込まれる。
さっきまでの痛みとは比べ物にならなかった。
なおも逃れようとゾロはもがいたが、 ちょうど返しが引っかかったような状態でそれも叶わない。

「なぁ、力抜けよ、キツくて入んねえ」

サンジがべちべちと尻を叩く。
ここまで入り込まれてしまったら、受け入れてしまった方がラクだ。
ゾロは観念し、懸命に息を吐いて尻から力を抜いた。

「うっ、ぐ、うあああッ!!」

力任せに強引に奥まで貫かれる。
受け入れるようには出来ていない場所だ。
痛いなんてモンじゃなかった。

薄く開いた唇からは苦鳴だけが漏れる。
繋がった部分の痛みばかりに意識が集中してしまう。

「は、なぁんだ、勃ってンじゃねえか」

不意に性器を握られて初めて、ゾロは自分が勃起していることに気づいた。
蔑むようなサンジの言葉を、ゾロは信じられない思いで聞いた。
痛みでそれどころでは無いハズなのに、身体は喜んでいるというのか。

「うっ、うあッ、いッ、んッ、ああッ」

突き上げられる度に漏れる悲鳴を、懸命に堪えた。
無類の女好きのこの男に、野太い男の喘ぎ声など聞かせたく無かった。
とんでもなく痛いのに、いまゾロの中にあるサンジが、 力を失わずに居てくれることだけがゾロの全てだった。

早くイッてくれ、楽にしてくれと思う一方で、少しでも長く繋がって居たかった。
自分の中で感じて、イって欲しかった。

「なぁ、ゾロ、離れるなよ。」
「な・・・、や、ッあ、」

後ろから覆いかぶさったサンジが、耳元でささやく。
熱い息が耳にかかり、ゾロは反射的にサンジのモノを絞めつけてしまい、 痛みに悲鳴を上げた。

「痛・・・ッ、」
「おれから、離れないで。」

低くて甘いサンジの声が、ゾロの耳に直接吹き込まれる。
ペニスをぬるぬると刺激していた指が、鈴口の部分をこじ開ける。
敏感な粘膜を擦られて、気持ちイイのか痛いのかわからなくなる。

「ゾロ。」
「あ、あ、イッ、ああ─────ッ」

首筋を甘噛みされ、性器を執拗に弄ばれて、ゾロはサンジをぎゅうぎゅうと絞めつけながら達した。
一拍遅れて達したサンジが、中に精液を注ぎ込むその拍動を、ゾロは絶望のなかで感じていた。



*****



事後のサンジを襲った感情は、猛烈な自己嫌悪だった。

愛しいと思い始めていた。
無くさなくて良かったと心の底から思っていたのに。

受け入れたフリをしながらも、ずっと心の奥底で、
頑なにゾロはサンジと距離を置こうとしていたのか。

求めながら拒絶する。
何故そんなに苦しいことをゾロが自分に強いているのか、 サンジには理解出来なかった。

何度言葉を尽くしても、どんなに態度で示したつもりでも伝わらない悔しさに我を忘れて、 言い分もろくに聞かずに、力任せにこじ開けて犯した。
侮蔑の言葉さえ吐きながら。

大きく抵抗するでもなく、受け入れようとする姿に、 そして、尻を犯されて悦んでいる姿に、勝手に他の男との経験を思った。

たとえそうだとしても、性癖を知りつつ見ないフリを続けてきた自分に、 責める資格があろうはずもないのに。

それなのに。

初めて入り込んだ他人の身体は、とても熱くて気持ちが良かった。
ましてそれがゾロのものだと思うと尚更興奮した。

果てた後、性器を引き抜くと、血混じりの精液が後を追うように流れ出た。
それが、引き締まったゾロの太腿を伝うのを見て、初めて自分のしたことの重大さに気づいて 急に恐ろしくなった。
屋上のコンクリートの上に、ずるずるとくず折れるゾロを置き去りにして、立ち去ってしまった。

「クソッ、最低だ、おれ・・・。」

明日どんな顔でゾロに会えばいいのか。
サンジは頭を抱えた。

それにしても─────。

「・・・あいつ、すっげエロかったな・・・」

突き入れるたびに漏れた甘く掠れた声も、ぎりぎりと絞めつけた後孔も───。

「うっ・・・おれ、ホンット最低・・・。」

籠る熱を抱えたまま、眠れない夜は更けていく。



*****



サンジが身体を離した後、ゾロはしばらく放心状態だった。
荒淫されたというのに達してしまった事実に、自嘲的な笑いが込み上げてくる。

・・・こんな形でヤられたってのにな───。

起き上ろうと腹に力を入れると、中から残滓が流れ出てくる。
決して命を結ぶことは無い、ただ徒に打ち捨てられるだけの、サンジの生の証。

「はっ」

女になりたいわけではない。
だが、お互いの将来を思うとき、2人でいる未来に安寧は無いのだと、考えずには居られない。

身を引いた方がサンジの為であると、何度も考えたのに。
背後から覆いかぶさってきたサンジの、シャツ越しの体温すら恋しくて、 離れないでと囁いたサンジの声を何度も反芻してしまう。

「情けねぇなぁ」

天を仰いで溜息をひとつついて、ゾロは立ち上がる。
傷ついた部分が鋭く痛んだ。
乱暴に脱がされた衣服を適当に身に着け、近くのトイレの個室に駆け込んだ。

手早く体液の後始末をして、もう一度溜息をつく。
自分でも気づかぬ内に、ゾロの頬に一筋涙が流れた。

「情けねぇなぁ、畜生・・・」






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