帰還 after -1-


到着したのは比較的賑やかで大きな島だった。
ログがどのくらいで溜まるのかを調べに出たナミ情報によると、
海軍もいないし治安も良さそうだという。

「とりあえず今日一日は自由行動にしましょうか、
 宿もそれぞれ適当に取りましょう。
 久しぶりに羽伸ばすのもいいわよね」
 
影の船長ナミの一言で翌日までの自由行動が決まり、
船番のフランキーを残し、それぞれ買い物や暇つぶしにと船を降りて行った。


男物のスーツでは流石に無理があるので、サンジの格好は
ラフなサマーセーターにパンツといういでたちだった。

本人の物だというのにサイズが大きく、
まるで彼氏の服をムリヤリ借りて着たように見える。

お、男の浪漫!!

とゾロは心の中で叫んだが、
実際に口に出したら相当な蹴りを食らいそうだったので、
じっと我慢で口をつぐんでいた。

以前の2割減の力とはいえ、サンジの蹴りは今でもかなり痛い。


「あら、サンジくんどこ行くの?」
「ああ、ナミさん、ちょっと服を調達してくるよ、
 これじゃあんまりだろ?」

サンジは繁華街へと向かおうとしていた。
従えているのは、嬉しそうな仏頂面、という世にも面白い状態のゾロだ。

「良いけど宿はどうするの?さすがに女の子一人じゃ・・・」
「ん?コレがいるじゃん」

サンジが親指でゾロを指し示す。
ああ、荷物持ち兼用心棒ね、とナミは納得しかけたけれど、
ん?待てよ?と首を傾げた。

・・・今のこの2人って、男と女よね・・・?

しれっとした表情のサンジはともかくとして、ゾロは明らかに嬉しそうだった。
ポーカーフェイスを必死に装っているが、何となく頬の辺りが緩んでいる。

はは〜ん、そういうこと?

ナミはにやにやとゾロの顔を眺め、やがてゾロの肩をポン、と叩いて言った。

「ふうん、まさかアンタがねぇ・・・?
 ま、頑張んなさいよ、」
 
あれで結構サンジくんは手強いわよ、と付け加えると、
判ってる、とゾロが返してきた。

へえ〜、面白いことになってきたわ。

ナミは頭の中でオッズを計算し始めた。

ロビンに早く報告しなくっちゃ!
2人が出来上がるかどうか、久々に面白い賭けになりそうだわ!


「じゃあねサンジくん、お買い物、頑張ってね!」


意味ありげな視線をゾロに向けつつ、ナミはロビンとの待ち合わせ場所へと急いだ。


* * *


サンジは衣料品店を覗き、自分の今のサイズに合った服を適当に見繕って購入していた。
カマバッカを出る際にドレスを何着か持って来たようだが、
どれもフリルがひらッひらについた乙女チックなもので、普段着には適さない。

パンツスーツとカジュアルな服を一揃い、
それとシックな黒のワンピースを一着選んでいた。

「・・・改まった席とかでさ、要るよな?」
「あ・・・ああ、」

畜生!!可愛いじゃねえか!!
少しはにかんだようなサンジの笑顔に、ゾロは完全にノックアウト寸前だった。


* * *


「あ!ロビン!!ねえ聞いて聞いて!!」
ロビンと合流したナミは、先ほど見たゾロとサンジの様子について興奮気味に語った。

「ね、麦藁海賊団にカップル誕生かも!
 それにしても意外よね〜、
 女なんて興味ありません、って顔してたゾロがさぁ、
 鼻の下なんか伸ばしちゃって・・・」

ここまで一息に喋って喉が渇いたナミは、喉を潤そうと紅茶を口に含んだ。
 
「あら、でもあの子達って、ゾロがネコじゃなかったかしら?」

・・・・・ぶー!!

ナミは、口の中の紅茶を勢いよく噴いた。

「ね、ネコぉおお?!」

「あら、ごめんなさい、ナミ、知らなかったかしら?
 あの子達、もともとそういう関係よ?」
 
「えええええ」

しかもゾロがネコ?!
あの筋トレ馬鹿のイーストブルーの魔獣が!?

「ちょっと待ってよ、それじゃあいつら・・・」
「ええ、そうね」

「今までサンジくんが”男”だったワケよね、」
「ええ、そうなるわね」

「・・・どうするのかしら」

ロビンがくすくすと笑う。
「さぁ・・・、面白いことになってきたわね」


* * *


必要なものを買い揃え、宿の前まで来たゾロとサンジだったが、
一人でもう少し買い物をしたい、とサンジが言いだした。

「いろいろと、準備もあるからさ・・・」
頬を染めるサンジの言葉で、"準備"の意味に思い当たったゾロも顔が火照ってくる。

男同士で身体を繋げるのには"準備"が必要だが、
男女であれば別の意味で必要になるモノがある。

今後の航海のことを考えれば、
男女の性交渉に付き物であるリスクには当然配慮が必要だった。

女のサンジに買わせるのも気が引けたが、
そのテのものを今まで自分で購入したことは無い。

自分で用意するというのだから任せてしまおうか、とゾロはよく考えもせずに思った。
あとで自分に降りかかる事態については全く想像もせずに。


* * *


小さな紙包みを抱えてサンジが宿へと戻ってきた。
ちょっとバツが悪そうに、へへ、と笑って紙包みをテーブルの上に置く。

丁度食事の時間になったので、服を着替えてダイニングへと向かった。
他の宿泊客の目がサンジへと向けられる。

傍目には、強面の用心棒を従えた金髪の美女だ。
しなやかな物腰は健在で、食事をする様もなんとも優雅だ。

蓮っ葉な口調で陽気に語るサンジはとても可愛らしかった。
とは言え、以前のクソ生意気な男のサンジを好きだったわけだから、
突如出来た可愛らしい恋人に、ゾロは嬉しいような悲しいような、
複雑な気分だった。


* * *


先にシャワーを浴び、ゾロは寝台に横になってサンジを待った。
よくこんな状況で眠り込んでしまい、悪戯されたり蹴られたりしたものだったが、
今日ばかりは気分が高揚して眠くはならなかった。

パタンと浴室のドアが開いて、バスローブに身を包んだサンジが出てくる。
上気して薄桃色に染まった肌がひどく扇情的だ。

冷蔵庫からビールを持ち出し、ベッドのゾロの横に腰掛ける。
プルトップを開けて一口飲むと、
「う〜、風呂上りの一杯は格別だよなぁ〜」
と息を吐いた。

「お前も飲む?」

そんな行動は以前のままだ。

ゾロは受け取って一口飲み、ビールをベッドサイドに置き、
サンジの肩に手を掛けて訊いた。

「いいか、」
「なんだよ、せっかちだな」

サンジが笑う。

「悪ィか、」

もう待てなかった。
サンジに、触れたい。

「いや、・・・いいぜ?」

サンジは立ち上がってバスローブの帯を外した。
はらり、と肩からバスローブが落ち、一糸纏わぬ姿になる。

「はは、なんだかやっぱり気恥ずかしいな」

裸身をじっと見つめるゾロの視線。
サンジはゾロの腰の上に跨った。


ぱた様よりにょサンイラストv



「綺麗だ」
「うわ、何だよ、おまえそんなこと言うんだ、」
「茶化すな、ホントのことだ」

「恥ずかしいヤツ・・・」

ゾロもやはり男だ。
女の裸を見ると、どうしても自分に無いもの、乳房に自然に目が行く。
サイズは控えめだが形が良く、先端に色づく乳首がツンと立っている。

ゾロはサンジの唇に軽く啄ばむようにキスをすると、
そのまま胸元へと唇を落とした。

「おい、いきなりそこかよ、」
「うるせえよ」

先端を口に含み、舌先で転がすと硬く立ち上がる。
さらに舐っているとサンジの唇から甘い息が零れた。

「ん・・・ふぅ・・」

乳首は男でも感じる場所だが、やはり感度が違うのだろうか。
サンジの唇からはとめどなく甘い声が零れ始める。

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