「まったくもう、人騒がせにもほどがあるわ!いーかげんにしなさいよね、ホントに!!」

「おぅ、わりぃ、わりぃ。ししし。」

両手を腰に当てて仁王立ちするナミに、あっけらかんと笑う船長。

「すいません、ナミさん。俺が・・・。」

「あ〜、いーのよ。サンジくんの所為じゃないし。みぃ〜んなこのアホ船長が悪いの!」

詫びるサンジにナミは軽く手を振って答える。

他の者も笑いながらこのやり取りを見ているが、サンジが戻ってきた時はちょっとした騒ぎになったのだ。





荷物と意識不明の船長を担いでサンジが戻ってきた。

「ルフィ〜〜っ!? どーしたんだっ!?」

「大変だぁ〜〜、医者〜〜〜っ!! って、おれだ!」

大騒ぎするウソップとチョッパー。

ナミも心配そうに覗き込み、ゾロとロビンもいつの間にか近くにいた。

「外傷はなし。呼吸も正常。でもちょっと疲労気味・・・。すぐ目は覚ますと思うけど。どーしたんだ?」

船医の顔になったチョッパーと全員がサンジを見る。

サンジが状況を説明する。

「恐怖、薔薇屋敷の怪・・・」

「怖ぇ〜〜〜。」

「バカ、だわ・・・。」

「まぁ。」

「・・・アホか。」

それぞれ違う反応を見せたものの最後のセリフは一緒だった。



『しょーがない、ルフィだし・・・』



そしてチョッパーの言うとおり、ほどなく目覚めたルフィ。

ナミにお説教をされ、ウソップに小突かれ、チョッパーに飛びつかれ・・・。

もみくちゃにされながら「腹減ったぁ〜〜」と笑うルフィ。



メリー号は出港し、船内の空気は普段どおりに戻った。











「ふーっ。」

明朝の仕込みを終えてキッチンを出たサンジはタバコに火を点け一息ついた。

なんとなく釈然としないものは残るものの、ルフィは無事だったし考えてもわかるはずのないことなんだと思うことにする。

(さて、寝るとするか・・・。ん?)

歩き出しかけた視線の先に、メリーの頭に座っているルフィがいた。





「夜の海に落ちたら、死んじまうぞ。」

そう声をかけると、珍しく素直に降りてきた。

サンジの前に立つとじっと見上げてくる。

何か言いたそうなのに、言い出さないでいる・・・そんな風に見えた。

「どした?寝ないのか?」

サンジの問いかけに促されるように口を開く。

「サンジに、ごめんもありがとうも言ってなかったし・・・。」

「その為に起きてたのか?」

「ん・・・、それもあるんだけどな・・・・。」

ルフィにしては歯切れの悪い物言い。

これはちゃんと話を聞かなくてはならない、と思ったサンジはルフィの腕をとって歩き出す。

「サンジ!? どこ行くんだ?」

「ナイショ話のできるトコ。」



そう言って入ったのは武器庫。

まぁ、夜中の武器庫なんて確かに誰も来やしない。

入る前にサンジは丁寧にタバコの火を消した。

ふたり並んで壁に寄りかかるように座り込む。

暗闇の中、互いの体温と息遣いが伝わってくる。

温もりに安心したようにルフィが話し出した。





「『連れてって』・・・、そう聞こえたんだ。薔薇の中から。」

「ん?」

「薔薇ん中に誰かいんのかと思って、覗いたら奥が光ってて。その光の先から声がしてたんだ『ここから、わたしを連れていって』って。」

「で、薔薇に潜り込んでたのか。」

「うん、サンジの声聞いて戻ろうとしたら、全然動けなくって、そしたら体から力が抜けちまって、ワケわかんなくなってて・・・。気がついたらもうメリーに居て、サンジの・・・。」





言葉が途切れ、俯いたような気配。

暗闇に慣れてきた眼でルフィを見遣ると、悔しそうに唇を噛んでいるのがわかった。

「ルフィ?おまえ・・・?」

「・・・サンジの顔と、手が傷だらけで・・・。サンジがどんだけ手を大事にしてっか、オレは知ってるのに・・・。なのに、オレの所為でサンジの手が・・・。」

いっそう強く、今にも噛み切りそうなくらい強く唇を噛み続けるルフィ。

サンジはそっとその唇に手を差し伸べる。

「そんなに噛んでたらホントに切れちまうぞ。」

指先で優しく唇を撫でる。

「平気だ。傷なんてすぐ治る。おまえが気にすることなんてないんだ。」

「でも・・・。」

「いーから、もう言うな。」

そう言ったサンジの右手に触れた温かな感触。

ルフィが、手の甲の傷に口づけていた。

大切な宝物を捧げ持つように、自分の両手でサンジの手を包み込むように持って。

そしておずおずと、でも丁寧に傷に舌を這わせる。

「っ!? ルフィ、何やってんだ!?」

「ん? だって舐めると傷、早く治るんじゃねぇの?だからさ。」

そう言って、獣が傷を舐めるようにゆっくりと舐め続ける。

傷を追って、甲から指先へ舌が動いていく。



ルフィの行為は純粋に労わりと謝罪の気持ちからきているものだと思うのに。

舌が触れ、動く度に、ぞくりと肌が粟立つような感覚が襲ってくる。

指先を小さな唇に含まれた時、背中に電流が奔ったように感じた。

「っ、ルフィっ、も、止めろっ!」

「なんで?」

切羽詰まったようなサンジの声に、不思議そうな声で問うルフィ。

天然も、ここまでくると始末が悪い。

「おまえさぁ、全っ然わかんねぇの?」

「なにが?」

妙に鋭いところを見せるかと思えば、こういうところは全く鈍い。

口で言ってもわかるはずもない、とサンジは行動に出た。

「つまり、こーいうこった。」



ルフィの手をとり、同じように唇を寄せ、舌を這わせる。

ただサンジのそれは明らかな意図を持って動いていた。

手の甲、薄く浮いた静脈をなぞるようにゆっくりと指先に向けて舐めていく。

サンジの舌が指先に辿り着く。

人差し指、中指、薬指・・・。

1本ずつ優しく、大切なものを慈しむように舐める。

その様子を、ルフィは息を詰めて見ていた。

サンジの唇が指先を口に含む。

そしてまたゆっくりと動いて、つけ根の方まで飲み込んでいく。

温かな舌とぬるりとした唾液の感触が、ある行為を連想させる。

ぞくりと背中を走り抜けたモノと、下肢に溜まってくる熱に息があがる。

「・・・っ、さ、サンジっ・・・!」

上擦った声が洩れた。



「・・・わかった、から・・・、もう止め、て・・・・。」

「ん?このままで止めていーのか?」

サンジの手が形を変え始めたルフィの中心をさらりと撫でる。

布地越しでも、はっきりと分かるまでにそこは熱を溜めていた。

「止めろって言うなら止めるぞ。」

サンジの手が離れていく。

その瞬間、ルフィの身体は離れていく手を惜しむように小さく跳ねた。

「っ、あ・・・・。」

思わず物足りなそうな声が洩れ、俯いてしまう。

(サンジのばか・・・。いつもはオレの言うことなんか聞かないでしちゃうクセに・・・。)

手を引いてしまったサンジをじっと見つめてみる。

けど、サンジは何も言ってくれない。



ホントは、もう熱くなりかけた身体を持て余し始めているのに。

「っ、ふっ・・・う・・・。」

我慢しようとすればするほど、気になって仕方がない。

熱を逃がそうと身体を捩っていたら、無言のままサンジが抱きしめてきた。

そして耳元で囁く。

「ホント、こーいうトコはガキなんだからよ・・・。 なぁ、ルフィ、おまえ食い物以外は“おねだり”出来ねぇのか?」

熱い息と共に吹き込まれた低い声に、身体が反応する。

こめかみ、頬、耳、とサンジの唇が辿っていく。

でも、唇にキスはくれない。

身体を抱く手も動いてくれない。



手。



メシを作る、サンジの手。

オレを夢中にさせる、サンジの手。

オレの、大好きな、サンジの・・・。





「・・・サンジ・・・、・・・なぁ・・・、して? サンジの手で、オレを・・・・っ!?」



ぐっと抱く腕に力が籠った。

サンジが小さく笑いながら顔を寄せてくる。

「カワイイおねだりだったな。たまには言わせてみるもんだ。」

「ばかサンジっ! っ、う・・・・。」

ルフィの文句は重ねられたサンジの唇で遮られてしまった。

「ん、ふ・・・っ・・・。」

息が詰まりそうなくらい強く口づけられて開いた唇に、サンジの舌が潜り込んでくる。

絡め取られるような激しさに、眩暈がしそうだ。

キスを仕掛けながら、サンジの手は胸の上を動き回る。

小さな突起は硬く尖り疼きを伝える。

いつの間にか、着ていたものはすべて取られていた。

いつにない性急さに、多少の途惑いを覚えながらもルフィの熱も高まっていく。

「サン、ジ・・・っ、どうし・・・、あんっ・・・」

問いかけようとする言葉も甘い喘ぎに変えられる。

ルフィの中心からは蜜が溢れはじめ、サンジの手が動く度に身体が跳ねる。

その蜜を指に掬い取って、サンジの指がルフィの蕾を開き始める。

「あっ、やっ、あぁっ・・・」

いっそう熱を帯びていくルフィの身体。

サンジの熱も昂り、ルフィを求めて止まない。





「っ、ルフィ・・・、挿入る、ぞ・・・」

急ぎ過ぎているのはわかっていたが、止められなかった。

足を開き、綻びかけた蕾に押し入っていく。

「・・・・・・!!!」

ルフィの身体が仰け反り、声にならない叫びが伝わる。

跳ね続ける細い体を抱き締めながら、サンジも心中を吐露していた。

「・・・悪ぃ、な・・・。あの時、薔薇の中で気を失ったおまえを腕に抱えて・・・。 俺はこのままおまえが目覚めなければ、と一瞬思った。それなのに、今、おまえの生を感じたくて、身体を繋げてる・・・。おまえが聞いた“連れていって”の声・・・。 それはもしかしたら・・・。

あの薔薇は・・・ どこかに誘(いざな)おうとしたんだろうか・・・。俺は・・・。」





言葉を紡ぎ終えると、サンジはルフィを抱く手にいっそう力を込めた。

サンジの与える快感に酔い、しがみついてくるこの身体は、今だけは紛れもなく自分のものだ。

「ルフィ、ルフィ・・・」

名を呼び、深く衝いてやれば、歓喜の声があがり涙が零れる。

その果てのないルフィという深淵にサンジも身を沈めていく。



互いの熱だけが、ここにある全て。



昇りつめたルフィが白熱を放つ。

「っ、あっ・・・、ああぁっ・・・・・・。」

それを受け止めたサンジもまたルフィの内奥へ自らの熱を解放していた。























ふたりの周りの熱気が穏やかな温もりへと変わり始めた。

「ん・・・ つっ・・・・。」

小さく身じろいだルフィが声を洩らす。

「悪かった、な・・・。痛ぇか?」

無理をさせた自覚のあるサンジは素直に謝りながらルフィを抱きよせる。

「ししし、へーきだ。でも、どーしたんだ、サンジ?」

腕の中でいつものように笑いながら、それでも自分の感じ取った不可解さを真っ直ぐに突きつける。

苦笑いしたサンジは言い訳のように答える。

「・・・おまえのおねだりがあんまり可愛いから、ついガマンできなくなっちまったのさ。」

「でも、それだけじゃねぇだろ?」

「・・・・・・・・・・。」

思わず言葉に詰まる。

どうしてこいつはこう要らん時に鋭いんだか・・・。

心の中で溜息を吐きながらも、こういうルフィに誤魔化しが効かないのも十分に分かっている。

自分の弱さを暴露するようなものだと、自己嫌悪に陥りそうになりながらもサンジは口を開く。

「・・・失くすことを、考えたんだ、おまえを。そしてそれに溺れそうになった。それが怖くなって早くおまえを確かめたくなって・・・。 おまえが聞いたっていう薔薇の中の声のことも絡み合ってきて頭ん中がごちゃごちゃになった・・・。『連れていって』欲しかったのは・・・・。」

「あははっ、バカだなぁ、サンジ!」

ルフィの笑い声がサンジの沈んだ声を吹き飛ばした。

「そんな有りもしないコト、考えてどーすんだ!? それにな、『連れていく』じゃなくて『一緒に行く』だろ!!」

「あ・・・。」

何を言ってるんだと言わんばかりの自信満々な瞳がサンジを見詰めている。

そうだった・・・。

俺の船長はこういう奴だった。



「ルフィ・・・。」

「ん?」

「一緒に、行くぞ。」

「おう!」







もう、薔薇の誘いは、届かない。





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ゾロルサイトマスター、A CORAL REEF 理樹様よりいただきましたv

CPこそ違うのですが、手フェチ繋がりなのです♪
理樹さんのサイトのサン誕サンル作品がとっても素敵だったので、

メールで「今度サンル書いてくださいね!」とお願いしたら、
何と書いてくださいました!

しかも拙宅の一周年に下さるとのことで・・・!!
嬉しすぎる・・・!!

ゾロ相手のときとはまた違う、優しいサンジと、
あどけなさの残るルフィの可愛らしさにもうメロメロです。

理樹様、ありがとうございました!