入ってきたのはゾロだった。
普段はヤツは割合早い順番で風呂を使う。
こんな時間に鉢合わせるのは初めてだ。
「何だお前、風呂まだだったのか、」
「いや」
戸口に立ったゾロが、怖ろしく簡潔に質問に答える。
俺は目のやり場に困った。
ゾロはタオルを持っているにも関わらず前を隠そうともせず、
堂々仁王立ちなのだ。
何でマッパなんだよ!
前くらい隠せよ!
俺は出来るだけブツを視界に入れないように努力して、
平静を装ってゾロに訊ねた。
「何だ?じゃあ風呂二度目?
また鍛錬でもしてたのか?」
「いや、お前が入ってるだろうと思って、」
「はい?」
「どうしても、確認しておきてぇことがあったんだよ」
ゾロが不意に動いた。
「何─────うぎゃッ」
俺はみっともない悲鳴を上げた。
いきなり何の断りもなしに、ゾロがタオル越しに俺の股間をぎゅうと掴んだのだ。
敏感な場所に突然触れられた驚きと、急所を掴まれているという恐怖。
だが俺にそんな声を上げさせたもっとも大きな理由は、
ゾロの手の中に捕らわれた俺のムスコが、
やんわりと勃ち上がっていたことへの驚きだ。
「・・・は、離せッ」
「やっぱりな」
ゾロが握っている手の力を強めながらニヤリと笑う。
「てめぇ、俺とヤりてえんだろ」
「な、なにバカ言って・・・つうか、離せ・・・」
俺はゾロの手を解こうと暴れたが、ゾロの手は
ガッチリと俺を握りこんでビクともしなかった。
「いっつも物欲しそうに見てンじゃねえか。
バレバレなんだよ。
勃ってんぞ。
抱きてぇのか?それとも抱かれてぇのか?」
頭の中が混乱する。
そうだったのか?俺、そんなことを望んでるのか?
それってホモじゃねぇか、冗談じゃねぇ。
俺は懸命に否定しながら、ゾロの指を一本一本引き剥がそうと試みる。
「そ・・・んなんじゃ、ねぇッ、
最近、ヌいてねぇから溜まってっ・・・やめ、」
「最近退屈してるからな。
何なら相手してやってもかまわねぇ。」
「な────ッ、んアッ」
ゾロの手はいつの間にか器用にタオルをめくり、
じかにムスコを刺激していた。
男同士、ドコがいいのかはわかるのだろう。
括れの部分を執拗に責め、先端の裂け目をぐちぐちと嬲る。
「ふ、ンう、やめ、・・・あぁっ」
痛みすら感じるほどの強引な手淫。
それでもゾロの手が自分のモノを擦っていると思うと興奮してしまう。
半ばムリヤリに性感を引き出され、身体に火が点く。
先端からは透明な雫が溢れ始めていた。
「それとも、全部俺の思い違いか?」
ゾロの少し掠れた声が俺の耳朶を打つ。
そこに切なげな響きを聞いたような気がして、都合の良い期待に鼓動も速くなる。
「これ、」
と促す声につられ、俺はゾロのもう一方の手元をつい見てしまった。
「触りてぇんじゃねえのか」
ゾロのもう一方の手が玩んでいたのは、俺が必死に視界に入れまいとしていたソレで、
しまった、と思ったときにはすでに遅く、もう目は釘付けだった。
まだ興奮を示してはいないゾロのペニス。
肌のほかの部分より少し色が濃い。
その後ろ側には柔らかそうな陰嚢が見える。
その中にある二つの芯をやわやわと揉みながら、
竿の部分を横咥えに甘噛みして舐め上げ、
淫らな声を上げさせてみたい。
その更に奥にある菊門に指を突き立て、
内部を優しく掻き回して敏感な場所を探り。
欲しいと言うまで焦らして、焦らして、
おねだりが出来ないようならお仕置きで、
一度指だけでイかせて─────
はッ!何妄想しちゃってんの、俺!
我に返ったときにはすでに遅く、完全に下半身に血液が集まってしまっていた。
腰が重く、膝に力がうまく入らない。
くくッ、とゾロが笑いながら言う。
「身体は正直だよな」
ゾロに握られたままの俺のムスコは完全に臨戦態勢で、
まさに証拠物件を握られた状態の俺は、もう誤魔化すための言葉が浮かばない。
「ぞ・・・ろ・・・」
情けない声で名を呼ぶ俺の声に呼応するかのように、
ゾロは唐突に俺のペニスから手を離し、横をすり抜けて湯船へと向かった。
「あッ、な・・・んで、」
完勃ち状態で放りだされた息子の、勇壮に勃ち上がった姿はかなり間抜けだった。
痛いくらいに張り詰めていて、もう出さないことには治まらない。
ざぶんと大きな音を立てて、ゾロがこちら向きに湯船に浸かる。
脚をドカッと縁に掛けた扇情的な姿で。
人の悪い笑みを浮かべてゾロが言う。
「てめぇ、俺に惚れてんだろ。
正直に言えよ。
ちゃんと言えたら相手してやってもいいぜ」
さあ、どうするコック。
俺は回らない頭で懸命に考える。
今ならまだ間に合う。
誤魔化せ、俺。
溜まってたんだ、擦られりゃ誰だって興奮する。
けれど。
もう俺は自分の望みに気づいてしまった。
俺はゾロが好きなんだ。
セックスしたいって意味で、好きなんだ。
「さあ、どうする」
嗤うゾロに再び促される。
まだ、まだ間に合う。
引き返すのなら今のうちだ。
けれどもう、自分の気持ちにウソをつけない。
身体の中で渦巻くこの熱を開放して欲しい。
ああ、そもそも俺、ゾロを抱きたいんだろうか、抱かれたいんだろうか。
どっちなんだろう。
でもそんなことすらもうどうでもいい。
ただ、ただひたすらに肌を合わせたい。
ゾロと。
ゾロと熱を共有したい─────。
おどおどとしてしまうのは仕方ない。
指先の震えが止まらない。
未知の世界だ、禁断の領域だ。
境界線を飛び越えるには勇気が要る。
「ゾロ、・・・俺、」
それでも俺は、覚悟を決めて、きっぱりと。
じっとコチラを見ているゾロに向かって。
「お前のことが、好きなんだ。」
仲間の境界線を越える一歩を、ゆっくりと踏み出した。
END.
エロ10のお題5
【配布元:Abandon様】
おどおど、でも、きっぱり。
ゾロ誘い受な感じで関係未満、
はじめの一歩な感じ話が書きたかったんですが、
エロ無しのはずで、今もエロ書いたとは思ってないんですが、
どーもエロ臭いのはなんでだ、アタシがエロなのか・・・?
お題攻略モノなので、条件付DLFです。
転載いただく際には配布元様へのリンクもお願いいたします。
2009.4.29(5/5までDLF)