金曜日に帰り支度をしていたサンジは、ウソップに呼び止められた。
「土日どっちか空いてるか?
映画のチケット手に入ったんでさ、行かねぇか?」
言われたサンジは一瞬考え、
「ああー、日曜なら」
と答えた。
「へえ、土曜は先約?店の手伝いか?」
「んーにゃ、マリモと市民公園」
「ししし、市民公園!?」
ウソップが驚くのも無理は無い。
市営の小さな遊園地は大人には少々物足りない。
利用客はまだ子供が小さい家族連れか、
付き合い始めて間もないカップルくらいだ。
とても高校生男子二人が仲良く出かけるような場所ではない。
ウソップがひどくためらいがちにサンジに訊ねた。
「なぁ、ゾロとお前ってさ、どういう関係?」
「どうって・・・」
らしくなくサンジは一瞬口ごもった。
「ダチだろ。他にどういうカンケイがあるんだよ」
「そりゃお前のほうはそうかもしんねえけどさ、
ゾロの方はどうなんだよ」
サンジは答えない。
「お前だってホントは気づいてんだろ、あいつのお前の扱い方って」
「─────黙れ」
「何だか惚れてる相手に対してみたいで」
「聞きたくねぇ」
「あいつのお前を見る眼だって」
「黙れ、ウソップ!」
サンジは椅子を蹴立てて怒鳴った。
「わかってる!わかってるからってどうすりゃいいんだよ!」
「ああやって散々甘やかしておいて、あいつ何にも肝心なことは
言わねえんだぜ?
どうすりゃいいんだよ、本人が何も言わねえのに
俺に何がしてやれるってんだよ!
それともあれか、俺のほうから股開いて、
抱いてくれって頼みゃあいいのかよ!?」
どうすりゃいいってんだよ。
俺もあいつもチンコついてんだぜ?
頭を抱えてしまったサンジを見て、ウソップはサンジを誤解していたことを知った。
奔放なサンジがゾロを振り回しているのだと思っていた。
振り回しているのはむしろゾロだ。
あまりにも曖昧なゾロの態度に、サンジはとまどっているのだ。
問題が問題だけに、自分から踏み込むわけにも行かないのだろう。
短気なサンジにとって、白黒つかない今の状態がどれだけ辛いものなのかは
想像に難くなかった。
「悪かったよ、サンジ
俺はまた、お前があいつの気持ちわかってて
利用してんのかと思ってた」
サンジはのろのろと顔を上げ、力なくウソップを睨んだ。
「俺だってそこまで鬼畜じゃねえ」
いや、お前結構鬼畜だけどね?
ウソップはそう思ったけれど、まだ命は惜しいので黙っていた。