「一緒に帰ろうぜ、」
剣道部の部活動を終え、制服に着替えて防具を片付けていると、
部室のドアを行儀悪く足で開け、金髪の男が入ってきた。
一緒に帰ろうぜも何も、一緒じゃないとサンジには帰りの足が無い。
先週通りがかりの他校の生徒とすれ違いざまに、
「何ガンくれてんだ、ゴルァ!」
といきなり喧嘩をふっかけ、一緒にいたゾロも巻き込んで壮絶な立ち回りを演じた。
腕っぷしだけには自信がある二人だったので、ものの数分で相手をボコボコにして
意気揚々と引き上げたのだが、相手にしてみれば言いがかりもいいところで
たまったものではない。
翌々日に商店街に自転車を止めて買い食いをしている間に、
報復として自転車がボッコボコにされていた。
一緒にとめていたはずなのにゾロの自転車はまったく被害が無く、
ああ、ヤツらは意外といいヤツらで、誰が元凶なのか良く理解していたんだなあと
ゾロは感心したものだった。
厳格なサンジの祖父は、「自分でしでかしたもんの始末は自分でケリつけろ」
と言って自転車の修理代を出してはくれなかったので(当たり前だとゾロは思う)、
サンジは小遣いから修理費用を捻出するか、自分で修理するしかなかった。
4月は文房具など何かと要りようで、金欠だったサンジは自分で修理することにしたらしいが、
あまりメカに詳しくは無いのでどこから手をつけて良いかわからず、
自転車はずっと玄関先に放置してあるままだった。
そんなわけでサンジは隣家に住んでいるゾロの自転車に二人乗りをして登校している。
支度を終えたゾロがカバンを持って立ち上がると、入り口にいたサンジが先に外へ出た。
外は鮮やかな夕焼けだった。
部室の鍵を事務室へ返して自転車置き場へ向かう。
サンジはひょこひょこと前を軽やかに歩きながら、その日のサッカー部の練習試合の様子を
まくし立てた。
ゾロの自転車は母親のおさがりのママチャリで、後ろに荷台がついていて二人乗りにはうってつけだ。
カバンを前かごに入れて真剣な表情でじゃんけんをする。
「オラ、じゃんけん、ぽん!」
サンジがパーでゾロがグーだ。
「てめえはくるくるパーだからいつもパーなんだ」
「お前こそグーグー寝てばっかだからいつもグーなんだ」
罵り合いながら自転車を引っ張り出し、校門へと引いていく。