発情しきったその表情に惹きこまれ、ゾロは言葉を発することが出来ずにいた。
応えが無いのを了承ととり、サンジは深くゾロのものを咥え込むと、
根元の方からいったん絞り上げるように吸ったあとで、
容赦なく敏感な部分を攻め立て始めた。
「うわっ、おい、・・・ぁ」
くびれの部分を執拗なほどに舐め上げて、ゾロにあまやかな声を上げさせてゆく。
とろとろと蜜をあふれさせている、先端部の小さな孔に尖らせた舌をねじ込み、
ちろちろと舐めとると、鋭すぎる快感にゾロの身体はのたうった。
「・・・っ、あ、出、出ちま───」
制止する暇も無かった。
耐え切れずシーツに爪を立てた瞬間、ゾロはサンジの口内で達した。
サンジはともかくゾロはすごい状態になってしまっていたので、
母親が帰ってくる前に、早々にシャワーを浴びに行った。
部屋に残されたサンジは先ほどの行為をぼんやりと反芻していた。
身体を繋いではいないけれど、ゾロと一線を越えてしまったことになるのだろう。
実際に事を構える前までは、タブーを犯してしまったら、
自分が別の何かになってしまうような気すらしていたが、
当然そんなに変化があるわけでもなく、あまり実感も無かった。
セックスは好きな相手を喜ばせたい、という気持ちの延長上にあって、
快感を共有する行為だ。
ゾロとこうなってみて、サンジは初めて強くそう思った。
ゾロは、ゾロはどう思っているんだろうか
ゾロがさっぱりとした表情で部屋に入ってきた。
「おまえも入るか、」
「いや、いい。こんな時間に人ン家で風呂貰ってくのも変だろ」
ゾロからは石鹸の良い匂いがしていた。
その肌にもう一度顔を埋めてみたい衝動に駆られ、
そんな自分にサンジはドキドキした。
劇的にではないけれど、少しずつ変化はしているのだ。
ゾロの身体に欲情するように変わってきている。
「あ、そういやぁ」
「なんだ、」
「最後までしなかったけど、いいのか、」
「ああ」
どこかバツが悪そうにゾロが答えた。
「いきなり最後までじゃ、おまえ怖えだろ」
「は?」
「大事にしてえんだ、おまえのこと」
ぶッ、とサンジは吹き出した。
「何言ってんだ、おまえ、乙女かおれは」
ゾロは茶化されてむっとしたようだった。
「おまえが女じゃねえのはよくわかってる
けど、しょうがねえだろ、惚れた弱みだ。
おまえさえ気持ちよけりゃいいんだ、おれはどうでも」
「おっまえ、すごい口説き文句だな・・・」
サンジは恥ずかしいやら嬉しいやら、なんだかもうよく分からない状態だった。
ゾロはやっぱりゾロで、基本的にまっすぐで男らしい。
男の自分から見ても、いい男だ。
そんなヤツにこんなにも想われてしまったら、ほだされもする。
サンジはゾロが愛しくて仕方なかった。
この男を失わずに済んで本当に良かった。
「おれは大丈夫だからさ、今度は最後までやろうぜ?」
「・・・無理しなくていいぞ」
「アホ、覚悟はとっくに決まってんだよ」
「じゃなきゃ、今日も、ここには来ねえ」
玄関先で物音がした。
どうやらゾロの母親が帰ってきたようだった。
「あ、そんじゃおれ帰るわ」
「おう」
「また明日な」
「おう」
サンジは去り際、ゾロに軽くキスをした。
「おやすみ」
「・・・おう」
赤くなっているゾロの頬をぺちぺちと叩いてから部屋を出た。
玄関先で、よそ行きの服を着たゾロの母親と会った。
ゾロの母はサンジの姿を認めると、いらっしゃい、と言ってにっこりと笑った。
努めて何気ない風を装いながら、サンジは笑顔を返した。
「お邪魔しました」
「あら、サンジちゃん、今ご飯作るから、ゆっくり食べて行ったら?」
いやいや、トンでもない!
気恥ずかしいやら後ろめたいやらで、
とてもゾロの家族と一緒に食卓を囲めるような気分ではなかった。
「ああ、いいよ、今日は爺さんが飯作ってるはずだから」
「そうお?またいらっしゃい」
ごめんね、おばさん。
おれ、ゾロとエッチしちゃったよ。
サンジは心の中で彼女に詫びながら手を振り、ゾロの家を出た。
end.
コンパートメントVに続きます・・・
2011.9.27