俯くな、顔を上げろ




生意気で凶暴なコックを力任せに組み敷いた。
長い脚から繰り出される蹴りは相当な危険物で要注意だが、一度間合いに入ってしまえば捩じ伏せるのは簡単だ。
馬乗りになった俺に殴られると思ったのか、コックは歯を食い縛り腕で顔面を庇っていたが、
ベルトに手を伸ばされて初めて行為の意図に気づいたようだ。

放せ変態アホマリモホモ野郎。
あらん限りの悪罵を吐きながら渾身の力を込めて抵抗してくる。
あまりに煩いので一発頬を張った。
それでも罵声は止まないので、マシンガンのように喚き続ける口を己の唇で塞いだ。

いつもの喧嘩の勝敗は五分と五分。
一度勝っても次にはひっくり返される。
腕力で勝っても意味がないのだ。
どちらの序列が上なのか力関係をはっきりさせるには、いっそ犯すしかない、とそう思った。
生意気なこいつにはそれが相応な仕打ちだ。
まかり間違ってこいつが善がり声でも上げようものならしめたものだ。
狂気じみていると、頭の何処かで気づいていながら、俺は必死に自分に言い聞かせていた。










殴られるのかと思ったら、スーツのボトムに手が掛けられた。
冗談じゃねぇ、こいつホモだったのか。
止めろっつっても聞きゃしねえ。
散々喚きたててたら口に噛み付いてきやがった。

服の隙間から手を差し入れられ、直に触られて弄ばれる。
あっさりと首をもたげるそれに内心舌打ちした。
自分にも同じモンついてんだ、そりゃどこがイイかもわかってるだろうよ。

やめろ、放せ、そんなふうに触るんじゃねぇ。
ダメなんだ、おれは。おれの身体は─────。










可愛いのね、あなた。とても感じやすいのね。


筆下ろしをさせてくれた年上の素敵なレディが昔おれにそう言った。
快楽に弱く、流されやすい身体。
エレクトすると簡単に理性が吹っ飛ぶ。

男の子で良かったわね。女だったら娼婦の素質大有りよ。

だから、男のゾロに刺激されて反応しても驚かなかった。
なんだ、やっぱりそうなのか、おれって節操ねえよなぁ、なんて思いながら。
でもコイツにだけは知られたくなかったよなぁ、こんな身体。
喘ぎ声がすぐ近くで聞こえて、それが自分の声だってことに心底驚いた。










過敏な反応をするコックに煽られる。
声に、身体に、表情に。
他のクルーが知るはずのない姿をもっと見たくて夢中になった。

抵抗はもう形ばかりのものになっていて、弱弱しく胸を押し返そうとするだけだ。
下半身から衣服を剥ぎ取り、肌をあらわにする。

なおも刺激を与えると、あっけなく達した。










乱暴な手で絶頂へと導かれ、自分の放ったものを潤滑剤代わりに抉じ開けられる。

指が。

中に。

壮絶な異物感と痛みで上手く息が出来ないが、おかげで少し理性が戻ってきていた。










「抜け、やめろ、ここまでなら、勘弁して、やる、これ以上、やったら、」
自分のものとは思えない、淫らな、掠れ声。

「力を抜け」
耳元でゾロの低い声がして肌が粟立つ。

「・・・一生、許さねぇ・・・」

「─────上等だ」










なんでこんなことするんだ。
ヤっちまって、みっともねえおれを嘲笑うつもりなら、さっさと突っ込めばいいじゃねえか。
なんで慣らすようなことすんだ。

なんで耳なんか甘噛みすんだ。
なんで乳首に舌を這わせたりすんだ。

勘違いしちまうじゃねえか。
変な声が出ちまうじゃねぇか。

これじゃあ、まるで。


─────愛撫だ。










身体を引っくり返されて後ろから貫かれた。
熱いものに何度も突き上げられて、まず最初に理性が飛んだ。
堪え切れずに漏れ出る苦鳴がいつしか喘ぎ声に変わる。

どんなツラして突っ込んでんだろうか。
背後のゾロの表情は全く見えない。

激しく揺さぶられ最奥まで犯されながら、
なんでバックなんだろ、やっぱおれのツラを見るのは嫌なのかなあ、
なんて考えた瞬間、今度は意識が飛んだ。










髪を撫でられる感覚に、少しずつ音が戻ってくる。
やけに優しい感触。誰だっけ。
気を失う前の状況を思い出すまで少しだけ時間がかかった。
おれが目を覚ましたのに気づいたのか、背後の気配が緊張する。

うわ、まだ繋がったまんまじゃん。

首だけめぐらせてゾロの方を見たおれは、その表情に愕然とする。
何だよ、しけたツラしやがって。
無理やりヤっちまった勢いはどうしたよ?

スマネェ、とか今にも言い出しそうな歪んだ顔。
冗談じゃねえよ、そんな顔、見たくねぇよ。

「───サンジ、」

うっわ、名前なんか呼んでやがる。
それ以上の言葉を聞きたくなくて、俺は乾ききった口を開く。

「─────てめぇ、よくもおれのケツバージンを奪ってくれやがったな」

だいぶ喘がされたんだろうか、嗄れた声しか出ねえ。
ゾロは無言だ。

ずるり、と引き抜かれて結合が解ける。
後を追うように流れ出るゾロの体液の感覚がひどく不快だ。
悲鳴を上げる身体を無理やり起こし、正面から奴の顔を睨む。

目元が不安に揺れるのがわかる。
だからやめろ、そういう顔をすんのは。

おれは必死に考えをめぐらす。
こんなツラは今すぐやめさせたい。
どうすればいい、どうすれば───。

「大事にしてたのによ、イヤ、誰にささげるつもりでもなかったけどよ。
 てめえ、責任とれよ」
「・・・責任?」

「そうだ、セキニンだ。当たり前だろ」

うまく巡らないおれの頭は、結局これしか思い浮かばなかった。
挑発だ、乗って来い。

「おれの中はそんなによかったのかよ。
 てめえばっかり気持ちよさそうに中出ししてくれやがってよ」

そんな情けねえツラ晒してんじゃねえ。
挑発に乗って来いよ。

「おれは全ッ然気持ちよくなんかなかったっつーの」
「・・・その割には善がってたじゃねえか」

そうだ、その調子だ。
乗って来い。

「はッ、あんなモン善がったうちに入らねえよ、バーカ」
「ああ?あんな良い反応してて序の口だってんなら相当な淫乱だな、てめえ」

いつもの不敵な表情が戻ってくる。
それでいい。

「アホ抜かせ。・・・ま、そんなにおれの身体が良かったってんなら
 たまに突っ込ませてやってもいいぜ?」
「・・・・・?」

「ただし、条件がある」
「なんだ、セキニンってヤツか」

「ああ、そうだ。おれとヤりてえなら責任もって毎回おれをイかせてみやがれ」
「・・・」

「それが出来ねえようなら─────」
「───何だ」

「おれがてめえに突っ込んでやる」

一瞬の間。そしてゾロがゆっくりと笑みを浮かべる。
おれが結構気に入ってる、凶悪な笑み。


「───上等だ」










俯いてる姿は似合わねえ。
狂気を孕んだような表情を浮かべて前だけを見ているお前の姿を、おれは結構気に入っている。

おれを抱くなら、情けねえツラ見せんじゃねえ。
魔獣の表情を浮かべて、おれを食い尽くせ─────。





END



2007.12.2

拙いながら、とねりこ通信(管理人:みう様)の悪ゾロ企画に
参加させていただきました

あちらのサイト様ではイメージイラストがついてて、
こっちより断然素敵に仕上げていただいてます(爆)





2008.6.1 追記

まだまだ悪ゾロ企画様は続いてますが、拙宅のサン誕終了を機にupしました。
投稿物だというのに裏扱いでごめんなさい、みう様 汗。

本格的な性描写は初めてでした。
まだ気恥ずかしさが残ってます。
初々しいね、自分(笑顔)