・・・・これを一体どうすればいいのか。
一枚の長い布を片手に、深夜のキッチンに佇む後ろ姿は誰のものか。

褌狂想曲

  

海を行くサニー号が立ち寄った、とある小さな島。
そこは丁度年に一度の祭りの真っ最中で。
島中に溢れかえる花の香りと舞い散る花弁の中、女たちは着飾り、男たちは豪快に神輿を担いで街を練り歩く。
それは多少の違いはあれ何処の祭りでの見られる、極ありふれた光景にすぎなかった。
ただ一つ違ったのは・・・・・・その祭りに参加する男たちの格好。
上半身は法被と呼ばれるものに身を包み、その下半身は何やら.変わった下着を装着している。
ぶっちゃけそれは、危なっかしいほどの露出度。
ぐるぐると巻いているように見える布で隠れているのは、僅かに局部とその周辺のみ。
後ろから見ると、お尻さえ丸見え状態。
正直男のむっちり太ももや、脛毛だらけの足など普通誰もが見たくもない・・・・・・筈だ。



・・・・それなのに。



「何かしら・・・・あの下半身の扮装。
実に興味深いわ」
初めにそれに注目したのはロビンだった。
お祭りとは基本古来から続く、その場所独特の伝統行事。
歴史的観点からも民俗学的観点からも珍しく貴重なものが多く、考古学者としてはその全てに興味をひかれるのは当然だろう。

例えその着眼点が人と違っても・・・・だ。

「そう言われてみればそうね、今まで見たこともないわ、あんな格好。
ちょっと露出度は高いけど、よく見ると豪快で男らしいじゃない」
同意したようにナミが頷く・・・・が。
「えぇーーーーーーー、お二人とも、あんな奇妙な格好に興味があるのぉぉぉぉぉ??」
驚きの声を上げたのは、船一番の伊達男と自負している料理人だ。
彼にしてみればあんな不安定で、何かあれば横からポロリと大事なものが見えてしまいそうな危なっかしい格好、そして何より露出度の高さ。
その美的感覚では到底理解できない。
っか、レディならともかく、男の下半身がその辺りに溢れかえる様など見たくもないというのが正直な感想だ。
しかし女性陣の意見は違っていた。
「あら、男らしくてかっこいいじゃない。
あれ何て言うファッションかしら?」
「だからあんなののどこが・・・・・・」
「褌だ」
口を挟んだのは、今まで黙って話を聞いていたゾロだった。
「あら、あんたアレ知ってるの?」
それはおよそ歴史や民俗学などに興味はさらさらないと思われる、意外な人物から飛び出た意外な言葉。
「あぁ、あれは褌ってもんで、言わば祭りの時の下着替わり。
俺のいた村にも褌をしめて参加する祭りがあって、ガキの頃はよく参加させられたもんだ。
まぁ、祭りの扮装としては欠かせないもんだったな」
「えーーーそうなの?
やだ、何かかっこいい。
じゃあゾロもあんな格好してたの?」
「まぁな、祭りの度に散々仕込まれた」
「や、それなら一度着けたとこ見せて!」
よほど褌がお気に召したのか、がっつりゾロの話しに食いついたナミは興味深々だ。
確かにゾロなら似合わないこともない。
「その時は私も同席させていただけるかしら?
出来れば着用する初期段階から、拝見できればいいのだけれど・・・・」
「あーーーそれいい!!」
そしてロビンまで。
言ってることは実に丁寧だが、よくよく考えると裸から見せろと言っているのと同じ。
流石この船の女性陣。

おかしい・・・・アレに興味を示すなんて。
普段以上にテンションが上がっている美女たちを見て、サンジは訳が分からない風で首をかしげた。
あんなキテレツとしか思えない格好・・・・・自分なら頼まれても御免だ。

「・・・・また今度な」
だが明らかに返事をしぶっている感のあるゾロの返答に、切れたのはなぜかサンジだった。
「テメェ、ナミさんとロビンちゃんの折角のお願いに対してなんて言い様だ!
男ならレディの頼みの一つぐらい、すぐに聞いてやるのが当たり前じゃあねぇのか?
それとも何か?
世界一の大剣豪を目指している剣士様は、そんなに心が狭ぇのか?
たかだか褌の一つや二つ、男ならどーんと見せて差し上げろ!!」
売り言葉に買い言葉。
当然と言えば当然のごとく、そんなサンジにゾロは・・・・・静かに切れた。
「ほぉ〜〜〜そこまで言うんならアレの着け方を教えてやる。
で、テメェがこいつらの前で着けてやれ。
それなら文句ねぇだろ?」
「おぉ、上等だこのやろーーーー
はん、テメェなんかよりこの俺様が立派な褌姿を披露してやらぁ」


この時・・・・・彼等はまだ気が付いてなかったのだ。
たかだか褌一枚が、自分たちの運命を大きく変えることとなることに。



そしてその夜。
お祭りを楽しむ為に陸に宿を取った残りのメンバーを残して、問題の二人はサニー号へ舞い戻っていた。
あの後何処かで手に入れてきたのか、ゾロの手にしっかりと握られた白い布。
それは間違えなく、褌と呼ばれるもので。
彼はそのまま無言で目の前に突き付け、サンジはそれを奪うように受け取った。
「ほら、始めは思うようにやってみろ」

出来るもんならな・・・・・

そんな上から目線と態度が気に入らなくて、サンジはちっと小さな舌打ちをして背中を向けた。
元々導火線の短さでは定評があるサンジである・・・・特にゾロ相手では。
ましてやへりくだって教えを請うなど、何があっても御免被る。
「ふん、テメェの力なんか借りなくても、俺は一人で・・・・・・あれ?」
判らない・・・・何をどうして、どうすればこの長い布を使って、昼間見た褌姿が出来あがるのか。

・・・・・謎。


だが、ここで教えを請う訳にはいかないとばかりに意固地な後姿を見ながら、ゾロは心の中で溜息をついた。

この男が頑固なことは判っている。
特に自分相手では。
それは同じ年の相手へのよくある競争心かもしれないし、ただのへそ曲がりなのかもしれない。
だが、実はゾロは案外そんなサンジのことを気に入っていた。
何と言うか・・・甘えることが苦手な不器用なこどもが、そのまま大きくなったような感じで。

色んな意味で・・・・目が離せない。


「おら、まずズボンを脱がねぇと何にも始まらねぇだろうが」
褌を手にしたまま佇む後ろ姿に、ゾロが声をかけた。
大体、褌の着け方なんて一度も着用したことがない素人さんが知るはずもない。
売り言葉に買い言葉の末の今の状況、こうなったらさっさと終わらしてしまうに限る。
「わ・・・・判って・・る・・・・って・・・・・・」
「おら、四の五の言わねぇで、とっとと脱ぎやがれ」
埒が明かないとばかりに、ゾロはずかずかとサンジの背後に近づき。
そのまま前に手を回し、あっという間にベルトを外し、ズボンの前を広げた。
当然、サンジのズボンは引力に従い、そのまますとんと下に。
「え?」

なんでズボンが??
っか、今俺何された??

最早サンジはプチパニック。
そのままゾロの方を振り返り、真っ赤な顔でぱくぱくと口を動かしている。

・・・・やっべぇ、こいつ・・・・・

普段小生意気な態度しか自分に見せない男の、意外な一面。
刹那、ゾロの中に悪戯心がむくむくと首をもたげたのは仕方がないことだろう。
いや、この時首をもたげたのは決してそればかりではない。
その証拠に、そのまま彼の手はサンジの黒いビキニパンツへ。
「え?あ?」
これには流石のサンジも未然で気がついたようで、慌ててその手を押さえた。
そんな反撃にゾロの口端が・・・・・上がった。
それはそれは極悪人のような顔で。
「ほぉ〜〜〜、まさかパンツ脱ぐのも知らなかった訳じゃあないよな。
昼間見た褌姿は、どっからどう見てもケツ丸出しだっただろう」

判るよな?
これも脱がねぇといけないの・・・・

そうゆっくりと耳元で熱く囁く。
わざと普段より低い声で。

実際褌は下着なのでパンツを履く必要はない。
だが、そこまで本格的に履く訳でもなし、ゾロも初めはパンツの上からでも充分だと思っていた。

あのサンジの真っ赤に染まった顔を見るまでは。

ぶっちゃけ・・・・あの顔は反則だ。

エロすぎる。

そう思ったゾロの行動は・・・・・素早かった。
流石、世界一の大剣豪を目指す男だけのことはある。


今サンジは完全に後ろからゾロに抱え込まれ、その手は彼の最後の砦へ。
しかし今の彼にはそんなことに気づく余裕すらなく、それをいいことにゾロの行為はますますエスカレートしていった。
「・・・・覚えてっか?
ロビンが言ってたよな、褌つけるとこから見たいって。
ってことは・・・・・見せるってことだよな、これ脱いだ姿から」
そうわざとらしい溜息をつきながらも、ゾロの指先はゆっくりとサンジのパンツを撫でた。
その下にあるモノを、ほんの少しだけ刺激しながら。

ぴくりと・・・・サンジの体が小さく震えた。


「男が褌締めるってことは、そう言うことだ。
テメェにそんな覚悟あるのかよ。
女の前で下半身を晒す覚悟がよ」
そんなゾロのある意味言葉攻めに、サンジはぶんぶんと首を振った。

・・・・可愛い。
これがいつも憎まれ口ばかりを叩く、コックと同一人物とは思えないほど。
もうゾロにしてみれば、どこをどう攻めても楽しくて仕方がない。
ぶっちやけ・・・・・いただきます状態。
そしてそんな美味しい状態を逃す未来の大剣豪ではない。

「まぁ、約束だから褌の締め方は教えてやる・・・・今からゆっくりとな」


そんな言葉と共にサンジのパンツが下ろされた後、どうなったか。
果たして彼が無事、褌の着け方をマスターしたのか。

それは次の朝、彼が起きれなかったことが全てを物語っている。

ゾロサン褌


Fin


いやぁホント、言ってみるモンだよね!

みんな欲望には素直になろうぜ!
(いや自重しろよ)


空前の褌ブームだった今年(しつこいようですがおれだけだ)
お誕生日のプレゼントには褌作品をくれてもいいのよ!と騒いでいたら、
ねこさんがこーんなセクハラゾロたんをくださいましたvv

すげー本当に褌書いちゃったよ、ねこさんてば(←ヒドイ


作中にはイラストのシーンは無いのですがww
ゾロがセクハラ抜きで褌のつけ方を教えてくれたとしても、

サイズ比べんじゃねーアホ!
やーらしい触り方すんなボケ!

などと、教えてもらってる間サンジは色々と気が気じゃないだろーなとww

そんなことを考えつつ描いたイラストなんですが、

あ、そーだ、お誕生日が一日違いの庫童さんに差し上げよう!と迷惑なスルーパスをかまし、
ねこさんには大いに怒られたのでしたww


ねこさん、ありがとう!!愛してる!!