芳賀ひかるさんのお誕生日に寄せて

【満ち潮】





「てめェ、趣味悪ィな」

ことさらに侮蔑を込めたように。コックの神経を逆撫でするように。
そんな口調で言ったつもりだった。
こうやってなじれば、きっとこのコックは腹立ち紛れに言うだろう。
『あぁ、俺だってそう思うさ』

そう言ったらしめたものだ。
『だったら趣味悪ィもんをてめェも俺も追求する必要無ェだろ』と、ピシリと俺は言ってやるのだ。

瞬時に組み立てられたシュミレーション。
だが、コックの答えは俺の予想に反していた。

「趣味、悪くねェと思うぜ」
言いながら煙草を灰皿に押し付ける。
煙の立たない煙草は俺の視線の逃げ場を奪う。
立ち昇る細い煙を追いかける振りをして逸らしていた視線が、コックの視線に絡み取られる。
―――蒼い。

その深い蒼に吸い込まれるような感覚を覚えた。
とたん、唇に柔かいものを感じる。
口付けられてる、と気づいたのは、唇の裏側をなぞるように舌がそっと触れた時だった。
「てめ…っ…っ!」
抗議の言葉までもがコックの唇に吸い込まれ。
そしてそっと離れていった。

「どこもかしこもまっすぐな男を欲しがることの、どこが趣味悪ィってんだ?
どうせなら強欲だと言ってくれ。
船の上だから、抱くレディがいないから、てめェを欲しがってんじゃねェぞ」

紫煙を吐かない唇が、真摯な声音を吐き出す。



ピシリと拒絶する筈だった。
女のケツだけじゃ飽き足らず、野郎のケツまで欲しがるのかと愚弄したつもりだった。
なのに、コックが真剣だとわかって満足する自分がいる。

言葉だけでこれだけ満たされる。ならばそのうち…
言葉を紡ぐ唇に満たされ。命を繋ぐ温かい手に満たされ。
ついにはコックのすべてで満たされてしまうのだろう…。



剣士の小さな吐息が。
闇に。
溶けた。





(了)


金色アガペー 恋川珠珠さまより、
芳賀の誕生日にこんな素敵なサプライズプレゼントを頂きました!!

なんと!
ZSサイトマスター様なのに、SZ SSを書いてくださったんですよ〜!!

すすす、スミマセン!!!
んでもこんな素敵な作品を拝読出来るなんて、
自分、グッジョブ!とかなり強く思っちゃったりしております。
うふふ、珠珠さんのお初だそうですよv


珠珠さんの攻サンジは、物凄いテクでもってゾロをあんあん言わせてくれそうで、
エッチシーンも読みたくて身悶えモンですv

そうそう、ゾロは満たされちゃうんですよ。
いつかコックのコックで後ろの蕾を(タコ殴り)


珠珠さま、素敵な誕生日プレゼント、ありがとうございました!
愛してる!!(大迷惑)