無断借用禁止

無くて七癖、とよく言うけれど、もちろんサンジにだって癖はある。
喫煙癖と足癖は言うまでも無いが、拗ねたように唇を尖らせる癖、
座ると脚を組む癖、風呂場で鼻歌を歌う癖などいろいろだ。
そんな沢山の癖の中でも、生活を共にした親しい仲間じゃないとわからないのが、
寝るときの癖だ。

子供の頃からサンジはうつ伏せ寝だ。
余程疲れて前後不覚のときは別だが、普段は大抵、気づくとうつ伏せで寝ている。
子供っぽい寝相で、サンジとしても少々恥ずかしいのだが、
この年になってもこればかりは一向に治らなかった。
もっとも、夜は遅くまで翌日の仕込みをしているし、
朝も早い時間に起き出して食事の支度を始めるので、
クルーと言えども、そんなことを知っているものはまず居ないと思うのだが。

その日もサンジは仕込みを終え、一番遅くに床に就いた。
睡眠時間自体が少ない所為か、一旦眠りにつくと、
途中で目が覚めることは滅多に無い。
だが、この日は夏島海域だった所為か寝苦しく、
何かの物音で、珍しくサンジは夜中に目を覚ました。

ギシ、という自分の寝台が軋む音と、何かが背後から圧し掛かってくるような気配。

な、何だ?船幽霊か?

頭に浮かんだ、これまた子供っぽい可愛らしい想像を無理やり打ち消した。
雑魚寝状態の男部屋。
用足しにでも起きた誰かが、戻るベッドを間違えているのだろう。
だが、圧し掛かっている誰かが、ネグリジェの裾を捲り上げようとしているのに気づいて、
サンジは仰天した。

ここでサンジの名誉のために少々補足しておこう。
このときサンジが着ていた“ネグリジェ”は、
三文官能小説の中で、新妻が愛する夫との夜の生活のために着用するような、
スケスケな生地にフリルの付いた破廉恥なアレでは無い。
簡素なボタン以外飾りのない、ワンピース様のかぶりの膝丈スモックで、
男性でもこの時代、寝巻きとして愛用している者は少なくなかった。

もっともルフィやゾロなどは寝巻きと普段着の区別をあまりしていないので、
昼間着ているものと大差ない格好で寝ていることが多い。
この船の中では、シャレ者のウソップとサンジ、ブルックだけが、コレを着て寝ているのだ。

ちなみにフランキーは常に海パン一丁である。
何枚も持っていて、こまめに換えているようではあるが、
シャレ者と言っていいかどうかはちょっと判断が難しい。
ま、それは良いとして。

ネグリジェの裾を捲くろうとしている、何者かの手に驚いたサンジは、
あわてて誰何しようとした。
「誰・・・ッ」
だが、そのときかすかな、チリ・・・、という金属音が聞こえ、
圧し掛かって居る者の正体が訊くまでも無くわかった。

「ゾロ、てめえ何してやがんだッ!?」
身を捩り抗議するサンジに、ゾロは全く動じずに、
「何だ、起きちまったのか」
と暗がりの中でうそぶいた。

「ちっとじっとしてろ、すぐ済む」
「はぁあ?!」
ゾロの手はサンジのネグリジェの裾を腰まで捲くり、
下着に手を掛けて臀部をむき出しにした。

「ぎゃあ!」
「ッるせぇなぁ」

ゾロは舌打ちし、暴れるサンジに体重をかけて動きを封じたまま、
下着を腿のあたりまで引き下げた。

裸に剥かれた尻にゾロの下腹部があたる。
ズボンの布越しに感じる熱は明らかに怒張した男性器のソレだ。

お、犯される・・・!!

ことココに至って、ようやくゾロの目的に気づいたサンジはめちゃくちゃに暴れたが、
うつ伏せで組み敷かれている体勢ではどうにもならない。

「ふざけんなぁあ!!離しやがれ、クソ野郎ッ!!」
半ばパニック状態のサンジの耳に、信じられないようなゾロの言葉が飛び込んできた。

「・・・ったく!
 だからいつもみてえに寝てりゃよかったんだよッ!
 なんだって今日に限って起きちまったんだ?!」

は?

なんだそれは。
まるで今までにも何度も行為を繰り返してきたかのような口ぶりは・・・?!

「おいっ、今日に限って、ってどういうことだぁッ!?」
「だから、てめえいっつもそんな格好で寝てやがるからよ、
 たまに尻を借りてたんだよッ!

 おまえ脛毛はあンのに、尻はすべすべなんだな、
 なまっ白くて締りが良くて、なかなか具合が良いんだよ、てめえの尻は。」

冗談じゃねぇえええ!!
おれ今まで寝てる間にケツ掘られてたのか?!

「ひ、人のケツを勝手に使うんじゃねぇえッ!!
 それって強姦じゃねえか!!」

サンジが抗議すると、ゾロは、心外だ、という表情で言った。

「たかが腿借りただけじゃねえか、
 強姦っていうほどじゃねえだろ、
 ケチケチすんなよ、減るもんじゃなし・・・」

「ケチケチっておまえ・・・え、腿?」
「ああ。いくら何でも黙ってケツの穴まで借りはしねえよ。
 腿ンとこ借りてちょっと擦らせてもらってただけだ」

「ああそりゃ確かに強姦じゃあねえな、
 ・・・って十分強制猥褻なんですけどッ!」


こんなふうにな、とゾロは自分のズボンの前を寛げ、一物を引っ張り出した。
ぬらぬらと先走りに濡れたそれが尻の割れ目に押し当てられ、
くすぐったさにサンジは、ひゃあ、と情けない声を上げた。

内腿は皮膚が薄く柔らかい敏感な場所だ。
ヌル付いた太いモノが行き来する度、なんともくすぐったい感覚がサンジを襲う。

そう、触られてくすぐったい場所、それはイコール性感帯でもある。
擦られているうちにサンジ自身の性器も反応を始めた。

「・・・お、勃ってきたじゃねえか、」
「う、うるさいうるさいうるさいッ!!」

ゾロのペニスは、腿からアリの門渡り、陰嚢の裏を経て、
サンジ自身のペニスの裏スジをゴリゴリと刺激する。
気持ち悪いと頭では思っても、否応なしに性感は引き出されていく。

「もうこんなだらだらだぜ?」
「やッ、やめ、ああ─────ッ」

ゾロの手が鈴口をぬるりと拭った瞬間、サンジはあっけなく吐精していた。
しばらく処理していなかったし、何しろこんな種類の刺激は初めてだ。

「おいおいおい、随分と早ぇんじゃねえのか、」
「・・・はぁッ、う、るせぇ・・・ッ」

なんたる屈辱ッ!
クソ剣士にムリヤリ腿を貸し出しさせられた上、素股でイかされてしまうなんて!

必死に呼吸を整えていると、ゾロの手がサンジの尻の奥まった一点へと触れた。

「────ッ!?」

ゾロの手はサンジが放出した精液で濡れていた。
それを入り口にたっぷりと塗りつけると、ゾロは暴発寸前の砲身を押し当てた。

「ちょ、ちょ、ちょ、ゾロ、何するつもりだぁあああ!!!」

「固えこと言うなよ、ついでだ、こっちも貸せ」
「イヤだ!冗談じゃねえ!やめろコンチクショー!!」

入り口に圧力がかかり、つぷ、と先端が入り込む。

「嫌だ嫌だ、やめてくれ〜、おれそっちは初めてなんだよ〜、」
「お、いいね、処女ってワケか。じゃ、遠慮なく───」

「ばかッ!遠慮しろッ、わ、うわ、うぎゃあああああ────」





てなわけで。

美味しくいただかれてしまったサンジは、己のうつ伏せ寝の癖を大いに呪い、
どうにか改善できないかと努力したが結局実らずじまいだったらしい。

もっとも、無断で腿を借用される、ということは無くなった。

味をしめたゾロが、腿だけでなく尻の穴まで借用するようになったため、
さすがにサンジも目が覚めるようになったからである。

以後、サンジの尻には「無断借用禁止」という文字がマジック書きされていたとかいないとか。


どっとはらい。



End.


某様宅で“素股”シーンが描かれているSSを読んで、触発されて一気書きしたもの。
出張の朝に何書いてんですか、あたしww

2010.9.13