カウントダウン




もうイきそうだから抜かなきゃいけないのはわかってたけど、
ゾロの中があんまり気持ちいいのでもう出しちゃえばいっか、と思った。
後でかき出せばいいんだし、ついでにもう一回いいところを刺激して啼かせるのもいい。
「ごめ、ゾロ、」
体裁だけ謝って、俺は殴られるの覚悟で腹の中に出した。





「何度言ったらわかんだ、てめえの黄色い頭の中身はヒヨコ並みか、いやヒヨコ以下か」
予想通り俺は2発殴られた。
風呂場へ向かうゾロの背に、「俺が始末してやろうか」と声を掛けたけど、
「てめえの魂胆はわかってる」と睨まれた。

鍛え上げられた身体は均整が取れていてとてもキレイだ。
引き締まった大腿部に伝う、白濁した液体を注ぎ込んだのは自分だと思うと気恥ずかしい。

そもそも本気になれば俺より腕力がありそうなのに、どうして自分にこんなコトを許しているんだろうか。
今まで当然のように考えていたけど何でなんだっけ?
俺はゾロの腕を掴んで引き止めて訊いた。

「なあ、俺ら何でこういうことになったんだっけ?」

ゾロは何を今更、とぶつぶつ言いながら答えた。
「そりゃお前が酔っ払った勢いで圧し掛かってきたんだろうが。」

「そうだけど、そうじゃなくて、なんでお前ネコなんだっけ」

ゾロはますます何で今更、という表情を濃くした。
「俺が下で良いって言ったからだ。」

「だーかーら!なんで下で良いって言ったんだよ」
「うるせぇな、どうでもいいじゃねえかよ」
「良かねぇよ!お前突っ込まれんのが好きなのかよ?」
「馬鹿いえ、そんな訳ねえだろ」

押し問答で全く埒があかない。
俺はどうしても理由が聞きたかった。

「じゃ、何でだよ、辛ぇんだろ、痛ぇんだろ、我慢してんだろ、お前らしくねえじゃんか」
「しょうがねえだろ、てめえは─────」
ゾロが口ごもる。

「・・・俺が、何だよ、」
「何でもねえ」
「何でもなく無ぇよ、言えよ」
俺はいい加減腹が立ち始めた。

「どうでもいいじゃねえか」
ぶっきらぼうに答えるゾロにくってかかる。
「良くねえよ、言えよ、何で我慢してんだよ!
 それともアレか、やっぱお前、突っ込まれんのが好きなのか?!」

「うるせえな、違うっつってんだろ!  お前は毎日バタバタ走り回ってんじゃねえか
 俺は戦闘のとき以外は寝てるだけだから─────」

あ、というように口をつぐむ。

何それ、何それ、もしかして俺のため?
それってすっげえ愛じゃねえ?

ああ、もう、ゾロを抱き潰してしまいたいような、ゾロに全てを捧げてしまいたいような!
どうしていいかわかんねえ!!
とにかくゾロ、ゾロ、大好きだ!

「ゾロォオ」
「うわ、何すんだッ・・・」

俺はゾロに思クソ抱きついた。
勢いあまって床に二人してぶっ倒れた。
ごち、と鈍い音がして、ゾロが後頭部をぶつけるのはこれで今日2回目だ。

「いってえな、この野郎!」
「ゾロォ、大好きだ、愛してる!」

その台詞に2ラウンド目を警戒したゾロが、離せバカとか言いながらもがく。
俺がただぎゅうぎゅうと抱きしめているだけだとしばらくして気づいて、
ゾロは抵抗をやめてゆっくりと俺の背に手を回した。

ポンポンと背中を叩かれて、ああ俺、ガキみてえだなと思う。
ゾロのデカイ手の暖かな感触に安心する。
心地よさに身を任せていると、赤ン坊を落ち着かせるような口調でゾロが言った。

「なあ、俺がお前を抱いてもいいか、」

「へ?」

不意に視界がぐるりと回り、体勢を入れ替えられた。
仰向けになった俺をゾロが見下ろしている。
騎乗位を除いては大抵俺が見下ろす立場で、この体制からゾロの顔を見ることは稀だ。
下から仰ぎ見るゾロの顔は精悍で、普段とは違う雄の表情にどくんと心臓が跳ねる。

やべぇ─────。

「なあ、俺が入れてもいいか、」

ゾロは返事が出来ないでいる俺に覆いかぶさり、首筋に唇をあてた。
そのまま舐めあげられて耳たぶを口に含まれる。
ぴちゃ、という音がダイレクトに鼓膜に響いて俺の身を竦ませた。

やべぇ、喰われる─────。

そのまま耳の穴に舌を差し入れられて、その侵入されているという感覚と湿った音が俺の脳髄を溶かす。
ゾロの手はいつの間にか下半身へと伸ばされ、一度達して萎えた筈のそれをゆるゆると刺激しはじめた。

「ちょお、やめろ、ゾロ、」
「嫌だ」

嫌だ、とはなんじゃい!
普段は使わない子供じみた口調に突っ込みを入れたいが、繰り返し押し寄せる波のせいでままならない。

ゾロの手は緩やかにだが確実に俺を高みへと追い詰めてゆく。
俺はやめろと口では言いながら、もっと刺激が欲しくて腰が揺れるのを抑えるので精一杯で、
ゾロの手が後方へと伸びるのも簡単に許してしまう。

しばらく入り口をなぞった後、つぷ、と指先がもぐりこんだ。
「う」
痛さに声が漏れ、目尻を涙が伝った。
普段は自分がしていることだというのに、身体の中へとゾロが入り込むのかと思うと急に怖くなった。

涙がぼろぼろと零れ、それに気づいたゾロが手を止める。
「痛ぇのか」
カクカクと頷くとゾロは指をゆっくりと引き抜いた。
いきなりは無理か、と呟くのが聞こえた。

俺はゾロとのハジメテのとき、いきなり無理やりヤッたけど。


しばらく思案顔だったゾロが、俺の顔を正面から覗き込んで言った。
「てめえ、もうすぐ誕生日だろ」
「?ああ、」

「ナミがその頃丁度島に着くって言ってた。
 もしまだ島に着いてなくても、自分とロビンで料理をするからてめえは休ませるつもりだ、って」
「?はぁ・・・、」

意図が読めず、俺は気の抜けた返事をした。

「だからさ、その前の日にお前を抱いてもいいか?」
「え、ええ?」

「当日働かなくていいんだったら、少しぐれえ無茶しても平気だろ、」
えええええ?!っつうかさ、あのさ、

「俺の誕生日なのに、俺がプレゼント?」

おずおずと尋ねると、ゾロが一瞬の間をおいて頷く。

「うん」

うん、て何だ!そのめちゃくちゃ素直な返事は何なんだ!!

「お前の処女をもらうかわりに、俺の男の童貞をやるからさ、いいだろ?」
「・・・嬉しくねーよ、そんなもん・・・」

俯いているとゾロの大きな手が俺の顔を包んで仰向かせ、駄目か、と訊いた。
その表情を見てしまったら、もう駄目なんて言える訳が無い。
欲しくてたまらない、という表情。

ゾロが、俺を?

いつだって欲しがっているのは自分の方だけなのだと思ってた。
受け入れるのは怖いけれど、欲しがってくれているのかと思うと
嬉しくて嬉しくて、涙が溢れる。

小さな声でわかった、と呟くとゾロが、優しくするから、と言った。
なんだか処女になったみたいな気分だ、と言うと、だって本当に処女だろ、と言ってゾロが笑った。


お前の誕生日まであと何日かな。

ゾロは嬉しそうに指折り数え始めた。

ああ、本当に、俺の誕生日まであと何日なんだろう。

俺は執行の日を待つ死刑囚のような気持ちで、
祝福の日へのカウントダウンを始める。



END








2008.2.21

『メルトダウン』へ続きます

本当に需要があるのか疑問です
感想とかいただけると嬉しいです・・・本気で・・・