メリー、メリー・クリスマス! 2


12月の声を聞くと、街はイルミネーションに包まれ、
クリスマスムード一色になる。

同時に、年末となると工事が増えるのも世の常で、
華やかな街の様子をよそに、おれたちはバイトに精を出すことになる。

「今日ばっかりは早めに上がるか。」
イブの夜、現場監督が言った。

遅くまで作業することを覚悟していた皆は、一様に喜んで三々五々家路に着く。
おれとゾロもそそくさと帰り支度をする。
もっとも、帰るところは同じなんだけどさ。

「おッ、お前ら今日も一緒か。仲良いよなぁ。
 まさかイブの夜だってぇのに一晩中一緒か?」

周囲の揶揄する声に、
「ま、野郎同士気の置けない感じで過ごすのも悪く無ぇすよ」
とさらりと返す。

へへ、おれらはこれから熱い夜を過ごしちゃうんですけどね。

このバイトでゾロと知り合ってから1年と半年。
身体を重ねるようになってから1年と少し。

ゾロと過ごす、2度目のクリスマスだ。



同じ職場だから、お互い忙しいのは了解済み。
遅くなっても一緒に夜を過ごそうと、前から約束していた。
思いがけず早く帰れることになったので、
駅前の商店街で急遽ローストチキンを買い込む。
ワインは家に準備済み。

ああくそ、前からわかってれば自分で料理準備したのになぁ!

狭苦しいおれのアパートへと帰り着き、
出来合いの料理を食卓に並べる。
ささやかだけれど、2人だけのディナーの始まりだ。

今年は何が欲しいかと聞かれて、おれは何も要らないと答えた。
おまえだけ欲しい。
他には何も要らない。

ゾロに聞くと、「酒」と一言答えた。
全く色気が無えったらねえよなぁ・・・。
なので今夜は酒だけはいつもより上質なものにしてある。

それともう一つ。

「はい、コレ」
「何だ?」

2010 X'mas
手渡したモノは小さなアパートの鍵。

「合鍵か?」

何で今頃?というようにゾロは首を傾げる。
相変わらずヘンなところで仕草が可愛らしい。

「ここへ来る時は一緒に来るんだから、必要無えだろ」

うん、そうだな。
おまえ何回来ても1人じゃ辿り着けないしな。

「ここの鍵じゃねえよ」
「?」

「もうちょっとだけ広いところ、新しく借りた」
「え・・・」

「一緒に暮らそうぜ」

ゾロはしばらくぽかんと口を開けていたが、
言われたことがようやく理解出来たのか、頬を紅潮させて目線を泳がせた。

「・・・こんな簡単に、その、同居とか決めて、いいのかよ」
「同居じゃねえよ、同棲」

ゾロの頬がますます紅くなる。

「おれ、今まで付き合って一年以上続いたのっておまえだけだし」

ゾロの目に、喜びの表情と一緒に嫉妬の色が浮かぶ。
口元が僅かにむっと引き結ばれてる。か、可愛い・・・。

「・・・おまえ妬いてんの?」
「別に」

「過去に嫉妬してんじゃねえよ。今はおまえだけなんだし」
「・・・」

ゾロがぎゅうと抱きしめてきた。
バイトで鍛え上げられた腕で力任せに。おいおい、身体が軋む。

恋人同士とはいえ男同士、そんなに普段の関係は甘ったるいものじゃない。
おまえがおれの腕にすがるのは、行為の際のホンの一瞬。
達する瞬間だけだ。

だから、この抱擁だけでも十分だ。
おれは何も要らない。
おまえだけ、欲しい。

おれはゾロの背中をぽんぽんと叩いた。
「ほら、食おうぜ、チキン、冷たくなっちまう」

さあ、乾杯しようぜ、ゾロ。
これからは毎日愛してあげる。


メリー、メリー・クリスマス!




End.


去年のクリスマスに書いた、ガテン系ゾロサンSSの続編

早々に身体の関係だけは出来ちゃった2人だけど、
気持ちの方はゆっくりと寄り添って行けばいい。


2010.12.22