何か欲しいモンは無ェか?
おまえがぶっきらぼうに聞いてきたのはクリスマスの一週間前のことだ。
椅子が欲しい、とおれは答えた。
お互い学生で、親元を離れての一人暮らし。
決して余裕があるとは言えない仕送りの足しにと、
頑丈な体を売りに始めたバイト先でおれらは出会った。
初めのうちは寄ると触ると喧嘩ばかりだったのに、
いつしか気になる存在に変わり、今では週一のペースでお互いの家で夜を明かす。
キツイけれどペイが良いからと選んだ肉体労働のバイト、
根が真面目なお前は懸命に仕事をこなしている。
そうして稼いだ貴重な金をおれのために使ってくれるという。
もうそれだけで、そのことだけでおれは幸せいっぱいなんだけど。
一人暮らしのおれのアパートには、食事用の小さなダイニングテーブルと椅子が一脚。
あとは時々様子を見に来るジジイや客用にと、スタッキングタイプの背もたれの無い
丸椅子がひとつあるっきりだ。
おまえが来るときにもそれを使っているのだけど。
「椅子ならあるじゃねえか」
とおまえは言う。
「うん」
そう答えると、ますますわからない、という表情で首を傾げる。
そのあどけなさの残る仕草がなんだか可笑しい。
「あるなら要らねえだろ」
「でもさ、あれって客用じゃん」
今度はおまえが、うん、と言う番だ。
おれは一呼吸置いて、
「おまえ、客じゃねえだろ」
そう告げるとおまえは頬を紅潮させ、今すぐ行こう、買ってこようと言って
半ばムリヤリにおれを街へと引っ張りだしたのだ。
おれへのプレゼントでおまえへのプレゼント。
上機嫌なのは後ろからでも歩調でわかる。
あの椅子におまえを縛り付けて、あんなことやこんなことをしてあげる。
ラッピングされた大きな荷物を嬉しそうに抱える姿がかわいらしくて、
ついでに買い込んだ夕飯の材料を手におまえの後ろを歩きながら、
ついそんなことばかり考えてしまう。
だっておまえは喜ぶだろう?
上からも下からも涙をぽろぽろと零して。
だけどそれはやっぱり次の機会にとって置く。
今日は腕を振るうから。
メニューは定番のシチューだけど、本気のおれの手にかかると全然違うぜ?
今日はその椅子を使って2人でシチューを囲もう。
おまえが美味いといってくれたなら、
それがおれへの最高のプレゼントだから。
End.
x32☆金色アガペー 恋川珠珠様宅のガテン系ゾロサンにインスパイアされて
うっかり一気書きしたSS
クリスマスイラストを描く時点で、あの2人を描きたい!と思い
勝手ながら設定を拝借させていただいたのですが、
妄想は止まらず、そのままSSまで湧いてきてしまったというwww
ブログにアップしてそのまま放置しておりました・・・。
珠珠様宅から逆輸入したのを発見したのでサイトアップという次第で・・・
2009.12.26(だったかな・・・)